現役獣医師が教えるグレインフリーフードのメリットとデメリット

2025/05/26

現役獣医師が教えるグレインフリーフードのメリットとデメリット

グレインフリーのメリットとデメリットは?

近年、ペットフード市場では「グレインフリー(穀物不使用)」のフードが注目を集めています。
特に健康志向の飼い主の間で人気が高まっていますが、本当にすべてのペットにとって最適な選択なのでしょうか?

今回はグレインフリーのメリットとデメリットについて解説していきます。

グレインフリーのメリット

1. 穀物アレルギーのペットに適しているかも

一部の犬や猫は、小麦やトウモロコシなどの穀物に対してアレルギーを持つことがあります。
こうしたペットにとっては、グレインフリーフードは皮膚トラブルや胃腸の不調を軽減する可能性があります。
ただし、食物アレルギーの原因の多くは動物性タンパク質(牛肉や鶏肉)であり、
穀物アレルギーの際も実際には穀物に含まれる微量なタンパク質に対して反応しています。
また、現時点ではペットにおけるグレインアレルギーは証明されたことが無い点を理解しておく必要があります。

2. 消化しやすい

犬や猫は本来、肉を主食とする動物であり、大量の穀物を消化するのが苦手な場合があります。
グレインフリーのフードは、肉や魚などの動物性タンパク質を多く含むことが一般的で、消化吸収が良く、エネルギー効率が高いと考えられています。
特に胃腸が敏感なペットには適している可能性があります。

3. 高タンパクで筋肉維持に役立つ

グレインフリーフードは、穀物の代わりに肉や魚、豆類を多く使用するため、タンパク質が豊富な傾向があります。
タンパク質は筋肉の維持や成長に重要な栄養素であり、特にアクティブな犬や成長期の子犬にはメリットがあります。

グレインフリーのデメリット

1. 栄養バランスの偏り
グレインフリーのペットフードは、穀物の代わりに豆類(エンドウ豆、ひよこ豆、レンズ豆など)やイモ類(サツマイモ、ジャガイモ)を使用することが多く、これが栄養バランスに影響を与える可能性があります。
特に、豆類を多く含むフードでは、特定のアミノ酸やビタミンの不足が懸念されます。
グレインフリーのみに注目するのではなく、しっかりと総合栄養食の基準をクリアしているものを選択しましょう。

2. 心臓病のリスク
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、グレインフリーのドッグフードと犬の「拡張型心筋症(DCM)」との関連を調査しています。
一部の研究では、グレインフリーのフードに含まれる豆類やイモ類が、タウリンというアミノ酸の吸収を阻害し、心臓病のリスクを高める可能性が指摘されています。
ただし、すべてのグレインフリーフードが危険というわけではなく、適切な栄養設計がされているものもあります。

3. 不必要な場合も多い
グレインフリーが流行している背景には、「穀物=悪」というイメージがありますが、実際には多くのペットが穀物を問題なく消化できています。
また、ヒト医療におけるグレインフリーが注目されていることから健康意識の高い人々の目につきやすくする目的でパッケージに記載される場合もあります。
犬は長い年月をかけて穀物を消化する能力を獲得しており、小麦や米などを適量含むフードを食べても健康に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
むしろ、グレインフリーにこだわることで、必要な栄養が不足するリスクもあります。

4. 価格が高い
一般的に、グレインフリーフードは通常のフードに比べて価格が高い傾向があります。
これは、穀物の代わりに使用する高タンパクな原材料(肉や魚、豆類)がコストのかかるものだからです。
飼い主の経済的負担が増える可能性があるため、コストとメリットを比較しながら選ぶことが重要です。

獣医の結論:グレインフリーは本当に必要?

獣医の結論:グレインフリーは本当に必要?

グレインフリーのペットフードには、特定のペットにとってメリットになる可能性がある一方で、不必要な場合や栄養バランスの偏りが生じるリスクもあります。
基本的にグレインフリーフードは「推奨されません」が、個人差の中で効果的に使用できる場合もあります。
また一般的なアレルギー検査では穀物がアレルゲンであるかどうかの正確な判定ができないため検査手法としては「皮内反応検査」が必要となります。

グレインフリーフードでもコントロールできない場合には除去食試験などさらに追加の検査が推奨されます。

グレインフリーが適しているペット
・穀物アレルギーを持っている
・胃腸が弱く、穀物の消化が苦手
・高タンパクな食事が必要(アクティブな犬や成長期の子犬など)

グレインフリーが必要でないペット
・健康な犬や猫で、穀物アレルギーがない
・拡張型心筋症(DCM)のリスクが懸念される犬種(例:ゴールデン・レトリバー)
・コストを抑えつつ、バランスの取れた食事を与えたい


ペットの食事は、単に「グレインフリーだから良い」「穀物が入っているから悪い」と判断するのではなく、個々の健康状態や栄養バランスを考慮して選ぶことが最も大切です。
フードを選ぶ際には、獣医師と相談しながら、ペットにとって本当に適した食事を見つけてあげましょう。

獣医師 いぬ ねこ ペットフード

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この記事を書いた人

獣医師 塩田純一郎

獣医師 塩田純一郎

獣医師。
首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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