最近うちのネコちゃんがおとなしい…もしかして変形性関節症?

2022/10/20

最近うちのネコちゃんがおとなしい…もしかして変形性関節症?

ネコちゃんにも高齢化が進みつつあります。

データによって幅がありますが、ネコの寿命は12〜18歳と言われています。年齢が上がるにしたがって生活の中での活動性は低下するものですが、その原因の一つでありながら気付かれにくい病気が「変形性関節症」です。

この病気は全身のさまざまな場所にある骨と骨をつなぐ関節への刺激や炎症によって、衝撃を和らげている軟骨に傷害がおこり、関節が本来の形から変わってしまうことで痛みや機能障害を引き起こします。

一説には、10歳以上のネコちゃんの9割が潜在的にこの疾患を持っていると言われており、今まで運動好きだった子が遊びたがらなくなったり、活動性が下がったりするようになります。年齢を重ねることでより症状が出やすくなるため、年齢による活動量の低下と捉えられてしまい、症状を見逃してしまうことも多くあります。

変形性関節症の症状とは

変形してしまった関節は動かすことで疼痛(とうつう)を引き起こします。そのため今まで日常的な行動だったことをしなくなることが出てきます。
例を挙げると

・おもちゃで遊ぶ時間が短くなる。
・お気に入りだった高い場所に登らなくなる。
・寝ている時間が長くなる。
・トイレに行く頻度が減る。
・触られることを嫌がる。

このようなことに心当たりがあれば一度病院での検査をしてみてもいいかもしれません。

変形性関節症の原因と検査

気づかないうちに進行して、症状が現れる変形性関節症。この病気はなぜ起こるのでしょうか。
基礎疾患として股関節形成不全や膝蓋骨脱臼(パテラ)を持っている子がこの病気の素因を持つと言われます。関節に負荷がかかりやすく炎症を引き起こし、関節の変形につながるのです。

このように別の病気を持っていて、それらが原因になるものを「二次性の変形性関節症」といいます。また、遺伝的な素因として有名なスコティッシュ・フォールドの骨軟骨形成不全症も同様に二次性の変形性関節症を続発させます。

それに対して加齢や体重増加、運動による関節への刺激が原因となるものを「一次性の変形性関節症」といいます。過体重や激しい運動により関節軟骨に炎症が生じて軟骨が分解され、結果として軟骨を失った骨同士がぶつかり合うようになり痛みを生じながら変形してしまうのです。

軟骨の炎症が起きているだけではレントゲンでも確認することができず、実際に骨同士が炎症を起こし、変形して初めて検査で見つかるといったことも少なくありません。

変形性関節症の治療と予防

変形性関節症の治療と予防

変形性関節症で見られる関節の変形。実は一度発生してしまうと治すことができません。
つまり、見つかった時点ではそれ以上悪化しないような手段を取っていきながら、今出ている症状とうまく付き合っていく事しかできないわけです。

一次性変形性関節症の場合、先述の通り体重過多や激しい運動が発症の原因になります。
さらに、変形が進んでいくにつれて活動量の低下を引き起こすため、一次性変形性関節症では体重のコントロールがもっとも重要な目標になります。

そのためフードを療法食に変更したり、1日のカロリー摂取量を落としたりする必要が出てきます。実際にネコちゃんがどれくらいの体格に位置するかの認識を獣医師と飼い主で共有する必要もあります。

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体重管理に加えて痛みのコントロールも必要です。
多くの場合は痛み止めを処方してもらいます。痛み止めも多くの種類があり神経過敏を抑えるものから炎症を抑えるものまで様々です。薬の効き具合や相性があったり、腎臓などの内臓の状態によっては服用できなかったりするものもあります。

投薬・食事療法に加えてサプリメントを使うことも有効な手段です。
ネコちゃんがサプリメントに対して嗜好性があるかどうかが問題になりますが、さまざまな種類のサプリメントがあるため、その子に合うものを選んであげましょう。

猫に負担をかけない生活空間を

関節症には遺伝的な素因もありますが、運動や衝撃も原因になる事が多くあります。そのため普段の生活のなかでも負担をかけないような環境づくりが大切です。
例えば高いところがお気に入りの子がよく上る所の手前に少し低い棚などを設置して、階段状にすることで一回のジャンプの衝撃を和らげるなどの工夫をしてあげることで、かなりの負担を軽減することができます。

変形性関節症は年齢を重ねていくと、程度の差はあってもほとんどの子が出会う病気として認識され始めています。日頃からの食事コントロールやサプリメントで症状の程度や出方が大きく変わってきますし、症状が軽いうちに対策をすることで軽症な状態を維持しやすくなります。普段の行動変化を観察して、気になることがあれば病院で検査を受けてみましょう。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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