季節の変わり目はペットの嘔吐や下痢、胃腸炎に要注意

2022/12/27

季節の変わり目はペットの嘔吐や下痢、胃腸炎に要注意

ペットの嘔吐や下痢、胃腸炎に要注意

12月に入ってめっきりと冬を感じる日が多くなりました。
それに合わせて動物病院内で多くなるのが嘔吐、下痢の診察。
1日の診察の中で半分が消化器症状なんて日があることも。

何回?何を吐く?嘔吐の重症度

嘔吐の強さ、重症度は日常生活の中で見られる変化によってある程度判断できます。

まずはその嘔吐が急性なのか慢性なのか。

数日以内に始まった嘔吐の場合には急性。嘔吐が1週間以上続いていたら慢性と考えます。
このあたりの判断はどちらかというと獣医師が実際に診察で見たタイミングでの判断になることが多いですが、軽度な嘔吐の場合には数日で治まってしまいます。

それに対して1週間以上も続くような慢性の嘔吐は胃腸炎以外に原因がある可能性が高いため、詳しい検査をしてあげた方が良いでしょう。
嘔吐したものもある程度消化されているものなのか、ほとんど形が残っているのか、食事からどれくらいの時間が経過しているかも判断基準になってきます。

嘔吐の頻度については、軽度な場合には1日数回程度。5~6回以上の嘔吐を認めるようならば重度と判断して早めの受診を薦めています。

また重症度に比例して活動性の低下も認められるようになってきます。
これは気持ち悪さやお腹の痛み、倦怠感が出てくるためです。それに伴って食欲もなくなってしまい、
ひどい場合には全く食事ができない食欲廃絶といった状況になり、水も受け付けなくなってしまいます。

胃腸炎の時に嘔吐が見られる場合には上部消化管(胃・小腸)での炎症が主体となってきますが、さらに炎症が強くなることで小腸から大腸にかけ炎症が広がっていきます。
最初は嘔吐しかしなかった子が下痢にもなってくると炎症が強く広がっている可能性があるため、しっかりと検査した方が良いでしょう。

粘液・出血…下痢の重症度診断

粘液・出血…下痢の重症度診断

下痢の程度を考える時の指標も嘔吐の時と大きく変わりません。
活動性や食欲はもちろんですが、一緒に嘔吐があるかどうかで全体的な炎症の範囲を推測することができます。

下痢が続いている頻度や回数に加え、下痢の場合には便の状態で病気の主体がどこにあるのかが判断出来るようになります。
比較的軽度な下痢であれば形になっていますが、一部に粘液や出血が混ざってくることもあります。

これは消化管内の環境が悪くなることで粘膜が傷ついて出血したり、
粘膜を保護するための粘液が過剰に分泌されたりすることで便と一緒に出てきてしまう状態です。
そこからさらに症状が進むと泥状便から水様便と水分の吸収量が減っていき、形を保たない便になっていってしまいます。

小腸性下痢と大腸性下痢

小腸性下痢と大腸性下痢

下痢の原因は十二指腸・空腸・回腸からなる小腸性の下痢と、盲腸・結腸・直腸からなる大腸性下痢の2種類に大きく分けられます。

小腸性下痢の特徴としては、軟便や水様性の下痢、嘔吐を伴う、食欲低下、排便量の増加が挙げられます。
また小腸で出血を起こしている場合にはメレナと呼ばれる特徴的な黒い便が出てくる事があります。

大腸性下痢ではしぶりや排便回数の増加など排便の仕方自体に変化が出てくることがあり、
粘液を主体とした便になったり、一部に赤い鮮血が混じった便になったりすることも。

嘔吐・下痢を中心とした消化器症状の多くは胃腸炎であり、比較的ありふれた病気です。
程度が軽い間は今出ている症状を抑えてあげる対症療法で自然治癒力をサポートし、治療してあげます。

治療しないで放っておくとより重度の胃腸炎、慢性腸炎、膵炎に移行していきます。
猫ちゃんの場合には三臓器炎と言う名前がついた病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

また、単純な胃腸炎ではなく、アジソン病のような内分泌疾患、子宮蓄膿症といった重症度の高い疾患の場合もあり、
中齢から高齢の子では消化管の腫瘍(癌)も鑑別に上がってきます。
そのような病気を疑う時には全身的なスクリーニング検査が必要になることも。
意外なところでは食べ物アレルギーなんてこともあります。

嘔吐下痢の回数が増えてきたら単なる胃腸炎とは思わずに、程度の軽いうちからしっかりと治療・検査をしていきましょう。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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