エコーとレントゲンって何が違うの?獣医が画像診断を簡単に解説
2021/12/28
ワンちゃんネコちゃんも画像診断
ワンちゃんネコちゃんが体調を崩して病院に行った時には、様々な検査を受けることになります。
まずは検査のトップバッターで血液検査を行うと思いますが、それ以外にもX線検査やエコーの検査を提案される機会も多くなってきました。
近年、特に機械の性能が向上しており、それぞれの検査がより短時間で済むようになりました。
一日の限られた診察時間の中で行える頻度が上昇したことは患者さんにとっても有意義なことだと感じています。
これらの検査は身体の中を様々な手法を用いて画像化して診断していくので”画像診断”と呼ばれます。
画像診断にはCT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)など様々な種類がありますが、実際にどのような手法で何を見ているのでしょうか。
今回はこれらの検査の目的と、その簡単な仕組みについて綴っていきます。
メジャーな画像診断はこの4つ!
画像診断に用いられる検査方法は大きく分けて4種類。
「X線」、「エコー」、「CT」、「MRI」です。
このうち、X線検査・エコー検査とCT・MRIでは設備的に大きな差があります。
X線検査とエコー検査の機器は比較的多くの病院に置いてあるため、血液検査などと合わせて同時並行的に行われます。
対してCTやMRIは設備が大型になるため、一般診療を行っている病院には無いことが多いでしょう。
CT、MRIを撮影する際は、ほとんどの場合設備を持つ検査機関に動物病院から予約をとって検査をする流れになります。
そのため施設の休みなどを含めて予定をあわせるといった手間がかかります。
またCT・MRIは検査にもう一つハードルがあります。それは麻酔が必要なこと。
ヒトの場合は「じっとしてください」と言われれば動かずに検査できますが、ワンちゃん・ネコちゃんの場合はそうも行かず、画像の撮影に時間がかかるCTやMRIは麻酔をかけて実施します。
一部施設や動物の状態によっては麻酔なしで実施する場合もありますが、それはレアケース。
そのため、血液検査で麻酔をかけても健康状態に問題ないが無いかどうかの判断も必要になってくるのです。
もちろん緊急性や重症度で検査の優先順位は変わってきますが、X線検査やエコー検査とくらべるとやはり少しハードルが高いですね。
次は各検査の簡単な仕組みと、どのような場合にその検査を行うかについてご説明します。
画像診断の超基本。レントゲン検査
ヒトの場合、交通事故やスポーツなどで怪我をしたときに行われることが多い検査です。
X線の照射は1秒もかからず、迅速な診断が必要な場合にも非常に有効で、エコー検査と並んで最も頻度の高い画像診断方法の1つ。
X線は骨を通過せず、逆に空気はほとんど通します。
お腹の中の臓器は臓器毎にX線の透過率が異なることで判別して診断します。
明確に分かるものの代表として骨折を始めとした骨の異常をみることができます。
反対に胸部のX線検査では空気が入った肺の中に影があれば腫瘍などを疑う。といった方法で使われます。
骨を透過しないという性質上、頭や脊髄などといった骨に覆われている場所の検査は得意ではありません。
検査の負担が少ないため、骨折などの外傷を始めとして、胸部や腹部のスクリーニング検査で使用します。
まず単純X線検査で当たりを付け、さらなる検査(エコーやCT検査など)を行う根拠を探すことにも利用されます。
フットワークと適用範囲が強い。エコー検査
英語で超音波はUltrasonographyなので海外ではUGと略される事が多いですが、日本ではほぼエコーで定着しています。
妊娠した時などの経過観察などで有名な検査だと思いますが、それ意外にも心臓の病気やスポーツ選手の関節の怪我などにも幅広く使われる検査法です。
機械の仕組みとしては超音波を発する部品(プローブといいます)から発せられた音波が体内の臓器にぶつかり、その跳ね返りを感知して波の強さを画像化します。
音波の性質上硬いものにぶつかるとほとんどすべてが跳ね返されてしまうので骨に覆われた脳や脊髄などの検査は苦手。
胸部のエコーも肋骨を避けるようにプローブを当てる必要があります。
また音波は空気によって散乱するので胸部の検査は当てる角度が非常に重要になります。
対してお腹は周りを骨が囲っているわけでも大量の空気が入っているわけでもないので大得意。
胃腸の動きの良し悪しまで判別できます。
X線検査と同様に身体への負担の低さや検査機器の取り回しの良さも相まって適用範囲の広い検査です。
腹部の異常の検出を始め、救急医療の分野でもその利便性の高さからよく利用されます。
グレードアップ版のレントゲン?CT検査
CT検査はX線検査の親戚で、身体を輪切りにした画像を見たことがある人も多いはず。
ドーナツ状の機械のなかに寝転んだ状態で入っていきながら撮影し、360°から微量のX線を照射して身体の細部まで見ることができます。
単純X線検査では2次元の情報しか得られませんでしたが、CT検査では得られた画像をコンピューターが解析して立体状に構成します。
そのため横断像だけでなく縦断像や立体を構成することも可能。
X線を用いるので単純X線検査と同じく骨に影響されますが、多方向から照射することに加えてコンピューターで画像を構成するので頭蓋骨内の検査も行えます。
比較的得意な検査部位としては胸部(特に肺)や全身の血管。
血管内に造影剤(画像上で白くなる物質)を入れる事で腫瘍の検査や脳梗塞の検査も行えます。
ワンちゃんで比較的多い門脈シャント※の手術をするときも、原因になっている血管を特定するのに使われます。
※門脈シャント…先天性の血管の異常。本来肝臓で解毒するはずの毒素が異常な血管のせいで肝臓に行かず全身に回ってしまう病気。原因となっている異常な血管を結紮し、肝臓に血液が流れるようにする手術を行います。
ヒト医療では緊急治療にも使われる機会が増えている検査法ですが、獣医医療ではまだそこまで普及していないのも事実。
大きな病院や大学病院、検査機関にまで出向いて検査を受けるといった流れになります。
単純X線検査よりもやや大掛かりな検査になりますが、血管などの細かい組織も見ることができ、情報量の非常に多い検査です。
MRI検査
検査で得られる画像はCTによく似ていますが、検査の方法は全くの別物。
正式名称はマグネティック・レゾナンス・イメージング(磁気共鳴画像)検査。
この検査法は磁気を照射することで体内の水分子がくるっと回り、照射をやめると元の状態に戻ります。その戻る時の速度を検出して画像化する機械です。
またCTと同様にコンピューターで描写するので、一度の撮影で数パターンの画像が描出できます。
撮影方法もCTと似ており多くの場合麻酔処置も必要になります。
磁気は今までに出てきた検査での方法と異なり骨によって阻害されません。
そのため脳内や脊髄を検査する時は第一選択になります。
脳炎や脳梗塞を始め、以前コラムで書いた椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患でも使われます。
MRI撮影の際の注意点としてヒトではアクセサリーをつけていたりペースメーカーが入っていたりすることが挙げられます。
金属製品を身に着けていると画像が正常に撮影出来なかったり、金属の種類によっては発熱しやけどをしたりすることも。
また心臓のペースメーカーはそれ自体が磁気によって破損し機能しなくなるためMRIの撮影は出来ません。
その注意点が獣医療でも実は重要に。
多くのワンちゃんはマイクロチップを体内に装着しており、これが撮影部位に近い場合にはアクセサリの時と同様にうまく画像が描出されなくなります。
場合によっては一度マイクロチップを摘出しないといけない。
なんてことにもなるかもしれません。
以上、今回は画像診断の検査の種類について綴ってみました。
検査の仕組みや理由を知っていると先生の説明や治療方針について相談したり納得したりしやすくなるのではないでしょうか。
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この記事を書いた人
塩田純一郎
首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。
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