犬のしつけの基本とトイレトレーニング【ペット相談室】

2022/09/15

犬のしつけの基本とトイレトレーニング【ペット相談室】

読者の方からいただいた トイレのお悩み

今回読者の方に質問を募ったところ、「排泄を家の中のいろいろなところでしてしまう」というお悩みをいただきました。

排泄の失敗はその原因によって対策も変わってきます。どのような状況下で失敗するのかがポイントになるので、具体的な条件をしっかりとリサーチしていくことが大切です。

そこで今回は、一般的なトイレトレーニングについて解説をしていきます。
序盤のしつけについてはトイレトレーニング以外でも使えるコツになっていますので、ぜひ実践してみてください。

■トレーニングの基本 オペラント条件付け

わんちゃんをしつけする際の基本的なメソッドの一つに「オペラント条件付け」というものがあります。
これはある行動をしたときに報酬あるいは罰をあたえることで、その行動の頻度を強化あるいは減弱させる方法です。

これらの組み合わせは以下の4つに分類することができます。状況に合わせて組み合わせることでしつけを構成していきます。

1、正の強化
ご褒美をあげることでその行動の頻度を上げること。
「お座り」という指示に対して、ちゃんと座ったときにだけオヤツをあげることで、最終的には合図だけでもお座りができるようになるといった、しつけの基本になる条件付けの方法です。

2、正の弱化
罰を与えることでその行動頻度を下げること。
望ましく無い行動をしたとき、動物へ不快感を与えることで条件付けをします。吠えたり噛みついたりしたときに叩くといったことですが、反動で攻撃行動が過剰になる場合もあるため、基本的には使わない方がいい方法です。

3、負の強化
ある行動をすることで不快感がなくなった場合に、その行動を繰り返すようになること。
物をかじる悪戯を飼い主の目の前でしていたら毎回怒られていたが、見ていないところですると怒られなかった。それを学習したあとには毎回隠れてかじるようになってしまった。

4、負の弱化
ご褒美や楽しいことが無くなってしまうことでその行動頻度を下げること。
噛み癖がある子と遊んでいる時に、たとえ甘噛みでも噛むという行為をしたら、遊びを止めてしまうことで噛みつくという行動の頻度を減らします。

■不適切な排泄の見極め

最初に、不適切な排泄が病的な排泄不全ではないかが重要になります。
「色々なところで排尿をしてしまう」という場合、膀胱炎や尿道閉塞といった排尿に係わる疾患によって表れた症状の可能性もあるからです。

また高齢の避妊済み雌の子などは尿失禁などを起こす場合もあります。
同様に便性状が硬い場合など、体質的な問題や病気が隠れている可能性もあるので、まずは動物病院で病気でないことを確かめておくとよいでしょう。

■トイレの場所がわからない?

■トイレの場所がわからない?

若齢の子にあるのが、トイレトレーニング不足。
この場合には「排泄すべき場所」といった認識がまだ無く、良い悪いの認識が無いままトイレに失敗していることがあります。

そのような場合には排尿の直前にトイレの場所まで連れていき、ペットシーツの上で排泄が出来たらご褒美におやつをあげる、といったような正の強化を実施して覚えさせます。トイレの場所を把握していない状態で叱ると何がいいことなのか分からず、いつまでたってもトイレトレーニングが身につかない原因になります。

トイレトレーニングの方法の一例としてケージとトイレシートを利用する方法を紹介します。

ワンちゃんの体のサイズにあわせたケージを用意して、その床の半分にペットシートを敷きます。そしてケージ内のトイレシートにおしっこができたらご褒美をあげて外に出してあげます。

そして、トイレシート以外でしてしまった場合には掃除をします。このときにリアクションを取ってしまったり、声をかけたりすると犬にとって報酬になる場合があるのでなるべくノーリアクションで行います。

トイレシートでコンスタントにおしっこができるようになればケージのドアを開けてチャレンジ。ケージの外からでも中に入ってペットシートでできればもう大丈夫ですね。

■トイレの環境が不適切

■トイレの環境が不適切

トイレ環境の基本として、トイレのサイズが体や心理的なサイズよりも小さい場合にはトイレに入りたがらないことがあります。

また自分が最もくつろげるスペースからの距離が近すぎる場合、気に入らず使用してくれないことも。

わんちゃんは自分のベッドスペースとトイレの間にある程度の距離をとりたがるので、ベッドのすぐ隣にトイレを設置しても嫌がって使用しなかったり、トイレと認識しなかったりします。最初のトレーニングの段階で数カ所トイレを設置してペットシートの上で排泄する習慣をつけさせてあげましょう。

■メンタル的な要因

最後にメンタル的な要因でトイレに失敗するパターンを紹介します。
今までしっかりとトイレで排泄できていた子が、何かのきっかけでトイレに失敗するようになる状況があります。

その中で代表的なものは「マーキング行動」です。
これは去勢・避妊をしてない子に出るもので、性ホルモンの分泌量が多いとナワバリ意識が強くなり出てくる行動です。これが習慣化してしまうとその後に去勢・避妊手術を実施しても完全に治らなくなってしまいます。

もともとの性格に分離不安傾向がある子の場合には、飼い主からの関心を引くためにわざとトイレを失敗することがあります。トイレを失敗する事で怒られたり、声を出したりして反応してもらえると学習した子は、キッチンや仕事場など飼い主の領域でわざと排泄するようになります。

この場合失敗に対する飼い主の反応が報酬となり正の強化の状態になってしまいます。失敗した場合は無反応で片付けて、うまくトイレができた時にご褒美をあげるようにするなど、正の強化を正しく利用するとよいでしょう。

今回はご質問いただいたトイレの失敗について解説しました。

このように失敗にもレパートリーがあり、実際のしつけへの反応性も異なります。ご褒美で使えるおやつやケージをうまく使いつつトレーニングをしてみましょう。

しつけの範囲ではカバーできない場合には不安薬などの処方も合わせて使っていくこともあります。その子の状態に合わせてうまくコントロールしてあげましょう。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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