冬に増えるエマージェンシー!猫の尿路閉塞とは

2022/12/01

冬に増えるエマージェンシー!猫の尿路閉塞とは

冬に増えるネコちゃんのおしっこトラブル

すっかり気温も下がってきて、今年もネコちゃんのおしっこトラブルのが増える季節がやってきました。以前も取り上げたおしっこトラブルですが、今回は尿閉(尿路閉塞)の種類や治療法について解説していきたいと思います。

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まずネコちゃんのおしっこトラブルは膀胱炎か尿閉かを区別するところが重要になってきます。尿閉だった場合は膀胱炎などと比較して緊急性が高いため、おかしいなと思ったらすぐ病院に連れて行きましょう。

猫の尿路閉塞と尿石症

尿路閉塞は尿が作られて排泄される経路のどこかで閉塞が起きてしまい、正常に排泄できなくなってしまう状態のことをいいます。詰まる原因はさまざまありますが、一番発生頻度が高いのは尿石によるものです。尿石はできる場所、詰まる場所によって腎結石や膀胱結石のように名前が変わります。

尿が排泄できなくなると、本来体外に排泄されるはずの毒素が血液中に残り続けることになるため、血液が汚れたままになる「尿毒症」になってしまいます。

また、タンパク質が代謝されてできるアンモニアにより脳へダメージが及ぶこともあります。さらに筋肉や心臓、神経の働きを調節しているミネラル(電解質と呼ばれる)であるナトリウムやカリウムの血中濃度が調節できなくなります。

この電解質異常という状態になると身体の調節ができなくなり、ナトリウムが上昇することで脳の機能に異常をきたし、カリウムが上昇することで急な心停止を引き起こすとても危険な状態になることも。

尿閉の進行はとても早く、24時間排尿できない状態が続くと体調が急激に悪くなり、閉塞している時間に比例して命の危険も高まってしまうのです。

尿路閉塞・尿毒症を疑う代表的な症状は
・頻尿
・元気消失
・腹部痛
・食欲不振
・嘔吐
などがあります。

これに加えて症状がひどくなると横になったまま立ち上がれなくなり、場合によっては虚脱や意識消失になってしまうことも。そうなってしまうとかなり重篤です。

いち早く見つけるための検査と治療

いち早く見つけるための検査と治療

尿路結石は閉塞する前に見つけられる場合もあります。
最も簡単で一般的な検査が尿検査。結石になる前の結晶を顕微鏡で見つけることができる上に、膀胱炎を始めとしたその他の尿路疾患を見つけるきっかけにもなります。尿のpHも測定でき、これによりある程度できやすい結石の種類を推測することも可能です。

また定期的な健診の画像検査で見つかることもあります。超音波検査で膀胱内を見ると石が見えたり、ある程度の大きさになるとレントゲンで見つかったりすることも。尿検査で結晶が出てきた時は確認のために膀胱の超音波検査を受けることをお勧めします。

結晶尿で、結石まで進んでいない場合には食事コントロールを始めることになります。結晶の種類にもよりますが、その原因になるミネラルを制限したご飯を食べることで体内から余剰になって尿に出ていくミネラル成分をなるべく少なくして発生のリスクを減らします。

この時に他の種類のご飯やおやつを食べるとせっかく制限しているミネラルが過剰になるため効果がなくなってしまうので注意が必要です。

療法食だけでコントロールができなくなる場合にはサプリメントや利尿剤を使って行くことになります。これにより尿中のpHを調整したり尿の量を増やしたりすることでミネラル濃度を上げないようにして予防します。

結石ができる場所とその種類

結石ができる場所とその種類

尿路は「腎臓」で血液から尿が作られるところから始まり、「尿管」によって「膀胱」へと流れていきます。膀胱で一時的に貯められた尿は「尿道」を通って体外に排泄されます。これらの中でも尿が貯まるスペースのある腎臓と膀胱で結石が形成されることが多く、通り道が細くなる尿管と尿道で閉塞が起きることがよくあります

腎結石を摘出するには手術が必要になりますが、腎機能が著しく低下するため閉塞していなければ経過観察になる場合が多いでしょう。

尿管につまる尿管結石は詰まってしまった結石を手術で取ることが一般の病院では難しいため、手術が可能な病院へ紹介してもらう場合があります。

また直接結石にアプローチするのではなく、結石はそのままにして腎臓と膀胱をつなぐチューブを別に埋め込む手術で対応することもできます。これはSUB(Subcutaneous Ureteral Bypass)システムと呼ばれ、尿管を迂回して尿を送り出すことができます。

腎臓は左右に1つずつあるので、腎結石や尿管結石で症状が出てくるのは両方の腎臓が機能していない場合です。片方が詰まっているだけでは症状がないため気が付かず、両方詰まって初めて分かることも珍しくありません。

尿管より下にある膀胱・尿道は結石の発生率がより高くなります。膀胱結石は閉塞がなくても、そこにあるだけで膀胱炎や感染症の原因になるため、基本的には手術を実施した方が良好な経過を得られます。手術では膀胱を切開して中の結石を取り出して洗浄することになります。尿道結石の場合にも基本的には膀胱内に結石を押し戻してから取り出していきます。尿道結石は長さの関係で女の子よりも男の子に多い疾患になっています。

尿石は体質によってどのような種類の石ができるのか大きく変わってきます。最もメジャーなものはストルバイトと呼ばれるものです。正式名称はリン酸アンモニウムマグネシウム結晶というもので、リンやマグネシウというミネラルの排泄量が多いと発生します。

この結晶は小さいものだと早めに治療をすると溶けてくれることがあります。また、同じくらいの発生度をもつ結晶、「シュウ酸カルシウム」にも注意が必要です。名前の通りカルシウムや葉物野菜に多いシュウ酸という物質の摂取量が多いと発生します。こちらはストルバイトのように溶けることがないため、ある程度の大きさになったら治療手段が手術しかなくなることもあります。

それぞれの結晶で対策の方法も違ってくるので療法食やサプリメント、内服薬など相談していきましょう。

今回は尿石症についてまとめてみました。

膀胱炎や膀胱結石は気付きやすいですが、詳しく検査をしてみないとわからない腎結石や尿管結石についても紹介させていただきました。早期発見のためにも季節に限らず、早めの健康診断をおすすめします。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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