おでかけ先でのペットのケガに注意!

2023/06/13

おでかけ先でのペットのケガに注意!

旅行先で起きるペットの病気や怪我について

梅雨の時期を過ぎると、夏休みなどの旅行シーズンが近づいてきますね。

コロナウイルス感染症も感染症法の5類感染症にランクが下げられ、旅行に行く機会もどんどんと増えていくことでしょう。

ペットとの旅行はもちろん楽しいものですが、病気や怪我には注意が必要。
今回は私が遭遇した、旅行先で起きたペットの病気や怪我についてまとめていきます。

旅先ではワンちゃんもはしゃぎがち

旅行先で起きる怪我のなかで最も多いのは整形外科疾患です。
「股関節脱臼」や「前十字靭帯断裂」またはさまざまな部位の「骨折」など、
突発的な動きや衝撃による怪我が多く見られます。

股関節脱臼は比較的若い子に多い印象です。
特にやんちゃな子は急に走り出したり、すべったりすることで強い力が股関節にかかります。
股関節は大腿骨頭という丸くなっている部分と、それをはめておく寛骨臼(かんこつきゅう)
とよばれる受け皿で構成されており、関節の中央に大腿骨頭靱帯、関節の周囲に関節包があります。
この、すっぽりとはまっている関節が無理な力が加わることではずれてしまうのが「脱臼」です。

関節が外れた時には大腿骨頭靱帯や関節胞はいずれも損傷していまっている場合が多く、
股関節が外れると足を地面に着けることができなくなり、3本足で歩いたり、
うまくお座りの姿勢が取れなくなったりします。

また、痛みのために動きたがらなくなるほか、食欲の低下なども発生します。

診断は触診による関節や骨の位置の異常確認と、レントゲンによる骨の位置のずれがないかどうかの確認で行います。
股関節が外れている場合には鎮静もしくは麻酔下で整復(元の位置に戻してみること)を試します。

その状態でしばらく固定してから固定を外してみて、それでも外れる様ならば手術が必要になってしまいます。
この怪我は股関節形成不全や関節炎、レッグ=カルベペルテスなどの先天性の疾患をもっている子は
さらに発生確率が上昇するので注意が必要です。

これらの病気を持っている子は日頃から滑りやすいフローリングをなるべく歩かせない様にし、
激しい運動をひかえることで予防をしましょう。

歩き方に違和感があったり、立った時に後ろ足がやや開き気味になったりしている子は、
一度レントゲン検査などを受けて異常がないかどうか確かめてみてもいいかもしれません。

太り気味の犬はヒザの怪我に注意

太り気味の犬はヒザの怪我に注意

前十字靭帯断裂は中高齢からの発症が多く、また肥満気味な子に多くみられますが、
どのような子にも起きる可能性のある怪我です。

前十字靭帯はヒトにもある膝の中の靱帯で、膝の関節が前後にずれないように固定しています。

高齢の子はこの靭帯が痛みやすく、日頃から関節炎を持っていたりするとその炎症の影響で靭帯が弱くなってしまっています。
また、体重が重い子は支えなければならない重量が多く、靭帯への負担も大きなものとなります。

これらの要因によって、弱っている部分に急激な負荷がかかると、靭帯を損傷してしまいます。
前十字靭帯が切れると足をけんけんしたり、引きずったりするなど、跛行(はこう)の症状が出てきます。

診断方法は触診で関節がズレて動くようなドロワーサインと呼ばれるものを触診で観察することと、
レントゲン検査での骨のズレの確認になります。

治療方法は内科療法と外科療法があります。
靭帯の断裂の仕方にも完全断裂と部分断裂があり、部分断裂とはダメージは入っているけれども、
完全に切れていない状態を指します。

部分断裂の場合には1ヶ月程度の安静管理と痛み止め、消炎鎮痛剤でのコントロールを行います。
外科療法では現在TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)という手術がもっとも一般的で、
これはズレてしまう部分の関節を一部切って、角度を調整して固定し直すという手術です。

この手術はできる病院とできない病院が分かれるため2次病院などの専門病院で行うこともよくあります。

バーベキューで気をつけたい異物誤食

バーベキューで気をつけたい異物誤食

お出かけ先ではキャンプやバーベキューなどのアクティビティも増えてきます。

日常にない状態や料理の内容のためにテンションが上がってしまうのは人間もワンちゃんも一緒。
お出かけシーズン以外で多い誤食はチョコレートや玉ねぎなどの中毒性のあるものやペットシーツや
おもちゃといった日常にあるものが多いですが、お出かけ先での誤食はまた内容が少し違ってきます。

多くのパターンがありますが、私が特に印象に残っている物を紹介します。

まずは「とうもろこし」。とうもろこしの実を食べるだけなら問題になることありません。
しかし、バーベキュー用に輪切りにされたものを芯ごと食べた場合は話が変わって来ます。

レトリバーなどの大型犬種は焼き途中のものをパクっと食べてしまうことがあり、
その時は吐き戻しの処置をしたにもかかわらず胃の中から出すことができませんでした。
芯は食物繊維でできているため胃の中で消化されず残り続けます。

もし、胃の中から小腸にながれていくことができたとしても、その先で詰まってしまう可能性があります。
結局その子は麻酔をし、開腹手術によってとうもろこしを取り出すことになりました。

もう一つはバーベキューで焼いたお肉
これもただのお肉であれば問題ないですが、
串や爪楊枝などが刺さっている状態のものでは話が変わってきてしまいます。

先が尖っている物の場合には、吐き戻しの処置を行うと胃や食道を貫通して
消化管穿孔や食道穿孔といった異物誤食以上に重症な状態になってしまう可能性も出てきます。
そのため、尖ったものの催吐処置は基本的には禁忌とされているのです。

以前に爪楊枝を飲み込んだ子の場合には結局麻酔下で内視鏡を使って取り出すことができたためお腹を開けずにすみましたが、
あまりに長い串だとやはり開腹手術が必要になってしまう場合も。
また病院の規模によっては内視鏡がない病院も多くあるため、必然的に選択肢が外科手術となってしまうこともあります。

異物誤食は放置するとそれだけでも消化管にダメージを与えてしまうのでいずれにしても早急な対応が望まれます。

以上、今回はお出かけ先で起きたとよく聞く出来事についてまとめてみました。

この他にも様々なことが起きる可能性がありますので、レジャー先ではペットから目を離さず、
楽しい思い出を楽しいままに残していきたいですね。


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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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