鼻水だけでも要注意。高齢猫ちゃんの鼻腔内の病気

2023/07/25

鼻水だけでも要注意。高齢猫ちゃんの鼻腔内の病気

ネコカゼの悪化での鼻水

ネコカゼは猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスの感染によって発生する疾患です。
上部気道感染症とよばれ粘膜が弱ることでウイルスだけでなく細菌感染を引き起こすことで膿のような鼻水が出ることも。
また口の粘膜も弱ってしまうので口内炎もできてしまいます。

ネコちゃんはグルメなわりに実はご飯の味がほとんどわかっていないのです。
ご飯の主な要素は「香り」と「口触り」になります。
ネコカゼはこの2つの感覚を弱めてしまうため食欲の減退には注意して、
もしも食欲が落ちてしまうようならばなるべく早めに病院で相談しましょう。

原因はご飯?鼻腔内異物による鼻水

原因はご飯?鼻腔内異物による鼻水

鼻腔内異物とはその名の通り鼻の中に本来ないはずの異物が入り込んでしまうもの。
ワンちゃんでも起きることがあり、特にワンちゃんは散歩中に草むらに顔を入れてしまったりすると
葉っぱや枝が入り込んでしまうことがあります。

それと同様にご飯を食べたときのカスが鼻の穴の中に張り込んでしまうとそれが原因で炎症を引き起こします。
炎症が起きると周囲の粘膜がやられてしまい、細菌感染をおこして重度の鼻炎になります。

特に高齢で要注意。鼻腔内腫瘍

鼻水やくしゃみをだしているネコちゃんで、特に高齢の子で気を付けなればならないのが「腫瘍」です。
腫瘍は高齢でより発生しやすくなりますが、
若い場合には5~6歳位でも起きうるため若いからといって完全に否定できないのも注意点。

いままでの鼻水の原因と比較すると、症状が強く出てきた場合には鼻〜額にかけて酷く腫れてくる点が異なるポイント。
ただし腫れも常に出てくる症状ではないため完全に言い切れないのも難しいです。
 鼻腔内腫瘍にはさらにいくつかの種類があります。まずは「リンパ腫」です。
これはネコちゃんの腫瘍のなかではかなり頻度が高い腫瘍なため聞いたことがある方も多いと思います。

もうひとつ多いものが「鼻腔腺癌」です。
いずれも悪性度が高く顔の変形を引き起こして流涎や呼吸困難などの症状を引き起こしてしまいます。

鼻の中の検査と治療

鼻の中の検査と治療

これらの鼻腔内疾患は検査が煩雑になりやすいです。
最も簡単に行える検査は各病院で行うレントゲン検査です。

ただし、頭部や鼻腔内は鼻腔内は骨迷路とよばれる骨が渦状に入り組んだ構造をしています。
そのためレントゲン検査では細かい構造を見ることができないため
鼻中隔と呼ばれる鼻の中央の骨や顎の骨が腫瘍や炎症などにより
溶けているのかどうかなどの大まかな検査は実施ができます。
この検査の結果次第で次の検査を決めていきます。

 内視鏡検査は全身麻酔を行い、口の中から内視鏡を入れてUターンするような形で観察します。
ただし鼻腔の尾側(鼻の奥側)から一定の距離しか観察できない場合もあるため
鼻の全領域をカバーできない可能性もあります。

この検査は鼻腔内異物を検査、あるいは異物の摘出を行う際に実施します。
異物の場所がわかりやすくてスムーズに行えた場合には
1回の麻酔で検査と治療を同時に行なう事ができる利点があります。

 CT検査は多角的なレントゲン検査というイメージで、
検査の結果を三次元的に読み取ることが可能になります。

この検査は内視鏡と同様に全身麻酔下で行います。この検査が最も詳細を確認し易い検査になります。
腫瘍を疑う場合には麻酔を行っているため
そのまま組織生検用のサンプルの採取も同時に行なうことが可能です。

 治療は鼻腔内異物の場合には摘出することが根本的な治療となるため内視鏡で取り除くことになります。
CT検査を先に実施した場合には異物が存在している部位を特定できる可能性もあります。

 鼻腔内腫瘍の場合には放射線療法が第一選択になります。
鼻腔内腫瘍に関しては主に「リンパ腫」と「鼻腔内腺癌」の2種類が代表的なものになります。

通常のリンパ腫は第一選択が抗がん剤による化学療法ですが、鼻腔内は別。

もう一つの原因になる鼻腔内腺癌も同様に外科的なアプローチがとても難しいため
基本的には放射線療法が最も効果があると言われています。
ただし、放射線療法には正確な場所に放射線を照射する必要があるため、
処置を行う毎に麻酔やCTが必要になります。

また施設にもよりますが基本的にはコストがやや高めなため
いずれも化学療法を選択していくことになることもあります。

この選択については様々な要素が関連してくるため、
もし鼻腔内腫瘍が見つかった場合にはどのような治療方針にしていくかは
担当の獣医さんとよく相談して決めていきましょう。

 以上、今回は鼻水が出てきたネコちゃんに隠れているかもしれない病気についてまとめてみました。
高齢の場合はより腫瘍を疑う可能性が上がってくるため、
ネコカゼや歯肉炎などとして治療をしていても治りが悪い場合には
検査を次のステップに勧めてもいいかもしれません。
免疫力が落ちがちな暑い日が続きますが、みんな元気に過ごしていきたいですね。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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