みんなの協力で助かる命 ペットの献血について知っておこう

2023/08/29

みんなの協力で助かる命 ペットの献血について知っておこう

ワンちゃんにも血液型がある

ワンちゃんにも血液型がある

輸血を行なう際に最も必要なものは「血液」です。

血液が必要であるのは当たり前のことではありますが、動物病院、特に町医者と表現されるような
一次診療と呼ばれる多くの患者さんの窓口となるであろう病院で輸血を行なう必要が出てきた時には
血液の確保が一番のハードルとなってしまいます。

輸血を行なう流れとして、まず血液型を調べることから始まります。

血液型は赤血球の表面にあるタンパク質の性質で変わり、ワンちゃんの血液型もいくつか種類があると言われていますが、
輸血の際に重視されるのは「DEA1.1」と呼ばれる抗原が陽性であるかどうかです。

最初にレシピエント(輸血を受ける方)側の血液検査を実施して、
DEA1.1が陽性であれば基本的にはどの血液型でも輸血は可能ということになります。

陰性だった場合、人生で初めてDEA1.1が陽性の血液を入れた際には溶血が起きる可能性は低いですが、
2回目以降は別の赤血球として認識してしまい、身体の防御機能が働いて赤血球を攻撃することになります。

DEA抗原の有無、ドナー(供血犬)とレシピエント(受血犬)の関係性を簡単にまとめると以下のようになります。

ドナー      レシピエント   輸血できるかどうか
DEA1.1 ( + )  DEA1.1 ( + )      可能
DEA1.1 ( + )  DEA1.1 ( - )      初回のみ可能(※)
DEA1.1 ( - )  DEA1.1 ( + )      可能
DEA1.1 ( - )  DEA1.1 ( - )      可能

※2回目以降は溶血(拒絶)反応が出てくる場合があります。

輸血には安全確認が必要

血液型検査を実施した後に、供血犬から採血を行い輸血の準備をすすめることになります。

ドナーからはまず少量の採血をし、内臓を含めて血液検査を行います。
これにより健康面で問題がないかどうかを確認します。

次にクロスマッチという検査です。
この検査により実際にドナーとレシピエントの血液をそれぞれ混ぜ合わせて顕微鏡で問題がないかを直接検査し、
輸血の安全確認を行います。

ここまで安全確認をしたうえで、初めて輸血を実施します。
実際に輸血を始めたら15~30分おきに体温や心拍数、呼吸数を観察しながら異常が出てこないか注視し、
異常が出てきた場合にはすぐに輸血を中止して発生した問題に対処することになります。

輸血が必要になる病気

輸血が必要になる病気

輸血は血液が大量に消費されてしまう病気に対して、
循環血液量や酸素供給の維持を目的として行われます。

事故などによる外傷や手術による大量の出血ではいかに早く、
状態が悪化する前に輸血を行なうことができるかどうかが生存率に影響します。

また免疫介在性溶血性貧血や免疫介在性血小板減少症のような、
自己免疫によって赤血球や血小板が破壊されてしまい、
貧血や体内での出血が発生する病気に対しても、
原因である免疫の暴走を止めるまでの間に血液の減少がコントロールできない場合に行われます。

最初で最大のハードル「輸血液」の確保

血液の確保、つまりドナー探しが多くの病院で課題になっています。
血液は採血してから使用までの時間が限られていることに加えて、輸血が必要な患者は唐突に病院に来ることが多いからです。

輸血液は急遽必要になる反面、採血しておいたものがいざというときに使えなくなってしまうこともあります。
そもそもドナーから貰った大事な血液を、期限がきてしまったためにダメにしてしまうということはとても残念なことです。

そのため多くの病院は血液が必要になった時、ドナーになってくれそうな子のお家に連絡を取ってお願いをして回ることになります。
病院によって異なりますが、ドナーリストを作っている病院もあります。

ドナーになることにも条件があり、それぞれ病院で定めていると思います。
多くの場合には年齢・体重・既往歴が条件になり、年齢が上がってくるとドナーを卒業することになります。

ドナー登録で救える命がある

今回は動物病院で行われる輸血について簡単に説明しました。

輸血は予期していないタイミングで必要になる上に、
早急な対応が必要になる場合が多い処置です。もしかかりつけの病院がドナーリストを作っていて、
条件にマッチするようであれば登録してあげることで、誰かの助けになることがあるかもしれません。

今回はワンちゃんについて主に解説しましたが、体重の大きめなネコちゃんでもドナーになれることがあります。
もしこの記事を読んで興味が湧いて、ドナーになってくれた方がいたら嬉しく思います。

病気 獣医師 アイドラペット いぬ 愛犬

おすすめのペットグッズ

この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

この人の書いた記事を見る

\SNSでシェアする/

アイドラペットTOPへ戻る