ペットの「できもの検査」細胞診は何をする?何がわかる?

2024/01/26

ペットの「できもの検査」細胞診は何をする?何がわかる?

細胞診ってどうやるの?

まずは今回解説する「細胞診」がどのようなものか説明します。
細胞診とはその名の通り、細胞を顕微鏡でみてどんな形なのか、
特徴的な見た目をしていないかを探し、できものの正体が何なのかを見極める検査です。

細胞を採取するのには、ワクチン接種の時に使うものと同じ細い針を使います。
この針を腫瘤に刺すことで針の中に細胞が入っていき、
それをスライドガラスと呼ばれる薄いガラス板に吹きつけることで顕微鏡での観察が可能になります。

針を刺すことで細胞を採取するわけですが、
健康な皮膚は腫瘤と違い簡単に細胞がバラバラになることはありません。

言い方を変えると悪性度が高く、
細胞同士の接着の弱い腫瘤からより多くの細胞が採取されることになります。

針を刺す検査と聞くと、痛くてかわいそうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
痛みに関してはワクチン接種とほとんど同様で、程度としてはそこまで強くありません。

また、得られた細胞が悪性を疑うものだった場合には治療の方向性が大きく変わっていく可能性もあるため、
気になるようであれば躊躇わずに実施する価値のある検査だと思います。


細胞診で診断できること

細胞診で診断できること

細胞診をすることで最も知りたいことは腫瘤が悪性度のあるものなのかどうかです。
腫瘤の種類については炎症性のもの、腫瘍性のものに加えて過形成などと呼ばれるような、
反応性に大きくなる生理的な変化もあります。

炎症については消炎治療や場合によっては抗生物質を使って対応していくことになります。
腫瘍性のものは良性なら経過観察で問題ありませんし、悪性をうたがう所見が見つかるようならば切除生検を行い、
さらに大きく切除して改めて悪性度を評価して治療方針を検討することになります。

細胞診はいくつかの細胞の形をみて診断するため、診断結果にもばらつきが出てくることがあります。
確実に診断名がつく腫瘍もあれば、悪性か良性か、上皮系か間葉系か、といったようなざっくりとした分類で止まることもあります。

細胞診で診断のつく病気

細胞診でほぼ確定診断がつく病気をいくつか紹介します。
これらは細胞診でわかるごく一部であり、この他にも多くの情報を得ることができるので治療方針を決める助けになります。

・脂肪腫
脂肪細胞が良性の腫瘍に変化したもの。多くは皮膚の下に柔らかい塊を形成します。
3cm前後にまでなることが多いですが、時間が経つにつれて非常に大きくなることも。
大型化して歩行に障害がでたり、神経を圧迫して痛みがでたりすることも非常に稀ながらありますが、
基本的には経過観察で問題ないものです。

・表皮嚢胞
皮膚の中に袋状の構造ができ、そこに角化上皮(皮膚の垢)がたまり大きくなっていくものです。
腫瘍性の変化ではなく、炎症を起こさない限りは経過観察で問題ありませんが、
垢に対して免疫細胞が反応した時には強い炎症を引き起こします。
一旦症状が落ち着いても繰り返す場合には外科的摘出が根本的な治療になります。

・肥満細胞腫
肥満細胞と呼ばれる白血球の仲間が腫瘍化したもので、いわゆる体型の肥満とは関係ありません。
ワンちゃんの場合には悪性腫瘍だと転移することもあり外科切除が推奨されます。
病理検査による悪性度によっては術後の抗がん剤治療も選択肢になります。

ネコちゃんの場合には良性腫瘍といわれていますが、
内臓に転移してしまうと悪性化することもあるため経過には要注意になります。

・リンパ腫
皮膚の表面ではありませんが、顎の下や首、足周りのリンパ節が複数腫れる場合にはリンパ腫を疑った細胞診が薦められます。
一般的なリンパ腫であれば院内の細胞診で診断がつきますが、少し珍しい型になると病理診断が必要な場合もあります。
また治療の方法については遺伝子診断を行い、使う抗がん剤の種類を選択することになるので追加の検査が必要です。

すこし難しい細胞診

すこし難しい細胞診

細胞診はペットへの負担も少なく、比較的安全に行える検査であり、
有益な情報も多いですが、実施にはコツが必要だったり難しかったりする事もあります。

・体腔内臓器への細胞診
体腔内臓器というと多くの場合には肝臓や脾臓といったお腹のなかの臓器が対象になります。
これらは針を刺す場所を目視できない点や出血のリスクが体表腫瘤よりも少しだけ高いことに注意が必要です。

しかしエコーを使用することによって画像上で刺入部を確認したり、
持続的な出血が起きていないかを確認したりすることができます。
コツさえ掴めば消化管やお腹の中のリンパ節、肺の細胞診なども行えるようになり検査の幅が広がります。

ただし内部の臓器へ針を刺すため、じっとしていない動物に実施するにはやや危険性が上がります。
そのため正確や状況に合わせて沈静や麻酔を行い、安全性を確保する必要があります。

また体表の腫瘤でも目の周りや口の周りなど、繊細な臓器が近くにあると、実施するのが困難になることがあります。
ペットが性格的に怒りやすい子であったりする場合などは、沈静をかけていくことになるため、
検査にやや時間が必要になるケースもあります。

以上、今回は細胞診という検査についてまとめてみました。

血液検査やレントゲン検査よりは、動物病院で実施する頻度が低い検査ではありますが、
対象によっては非常に有用な検査です。また体表腫瘤については思っているよりも安全で身近な検査だと思いますので、
気になるところがあればぜひ獣医師に相談してみてください。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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