犬のかゆみ、赤みの原因は?アレルギーを除去食試験で見つけ出せ
2024/01/30
かゆみの原因・アトピーとアレルギー
皮膚の痒みの原因は大きく分けて、感染症と免疫関連性の病気に分類されます。
感染症にはノミやダニの寄生や細菌・マラセチア(カビ)の感染による皮膚炎があります。
免疫関連性の疾患にはアレルギー性皮膚炎とアトピー性皮膚炎があり、症状として非常に似通っているため鑑別が難しい疾患になります。
寄生虫の感染症に対しては予防・治療薬を行うことがメインになります。
ノミの場合にはアレルギーも関与してきますが、ダニによる症状と同様に治療薬でやっつける事で症状の改善が見込めます。
ワンちゃんよりも比較的ネコちゃんでノミアレルギーに遭遇することが多いですが、
これはワンちゃんの方が比較的しっかりと予防薬を投与しているためだと考えられます。
アトピー性皮膚炎とその治療法
アトピーはアレルギーのひとつではありますが、厳密にはアレルギー性皮膚炎と区別されます。
家族性(遺伝性)のアトピー素因を持っている場合に症状が表れ、
環境中の要因(抗原)と皮膚が接触した際にアレルギー症状を示すものをいいます。
ヒトとワンちゃんでは解釈の違いが多少ありますが、以下が一般的に言われている診断基準になります。
①症状の初発が3歳以下
②主に屋内飼育
③搔痒感がグルココルチコイドで良化する
④症状最初は搔痒感から始まる
⑤前肢に症状がある
⑥耳介に症状がある
⑦耳介の辺縁には症状がない
⑧腰椎部分には症状がない
これに加えて特に食事誘発性アトピー性皮膚炎については、季節性がない、
胃腸疾患を伴う、グルココルチコイドで良化しない、
一般的に眼瞼炎を認めない、等の症状が加わります。
アトピー性皮膚炎では環境的な素因を完全に排除することが難しいため、
ステロイドや分子標的薬などを用いて症状とうまく付き合っていくことが大切です。
アレルギーと原因の調べ方「除去食試験」
食物アレルギーは皮膚に症状を起こすことはもちろんの事、
食事反応性腸症といったような消化器疾患を起こすことでも知られています。
フードアレルギーとは食事中に存在するたんぱく質に反応して引き起こされます。
原因を調べるための血液検査などもありますが、結果と症状が一致しない事もあり、
原因のたんぱく質を特定することが困難な場合もあります。
そんな中で治療して行く方法は「アレルギーの原因になる食事成分を摂取しない」になります。
その方法が「除去食試験」と言われるものです。
除去食試験とはアレルギーの原因を完全に除去したご飯を一定期間食べる事で症状が治まるのかどうかをまず確認する方法です。
その際に用いられる食事は加水分解たんぱく食・新奇たんぱく食・手作り食の3パターンからなります。
加水分解たんぱく食
加水分解たんぱく食は市販されているフードで、タンパク質を分解している食事です。
もともとタンパク質は様々な種類のアミノ酸とよばれる物質がつながった鎖のような構造をしているのですが、
この鎖が長ければ長いほどもともとの動物(牛肉や豚肉など)の性質を持った状態になります。
そのタンパク質を元の動物の性質を表さなくなる長さまで短くする事で
アレルギー症状を引き起こさないように調整して作られたものです。
ただしこの食事ではごくまれに元になる動物のタンパク質に反応することがあり、
完全に症状が消えないこともあります。
新奇たんぱく食
新奇たんぱく食は、いままでに摂取したことの無いタンパク質にすることでアレルギー反応を抑えるものになります。
アレルギー反応は複数回摂取したものにしか反応しないため、
最近はえんどうまめやカンガルーを始めとした珍しいたんぱく源を栄養素としているフードも多く出てきています。
加水分解たんぱく食も新奇たんぱく食も注意しないといけない点は、
信頼できるメーカーから出ているフードでなければ他のたんぱく質の混入が心配される点です。
手作り食
加水分解たんぱく食・新奇たんぱく食でも症状が消え切らない子の場合には手作り食を提案することがあります。
手作り食が優先順位の中で少し落ちる点としては毎日のご飯として作るのに手間がかかる事や、
ミネラルやビタミンなどの微量栄養素のコントロールが非常に難しく、
一般的に食べられている総合栄養食と同等の栄養バランスを維持することが困難になるためです。
診断のための除去食試験の使い方としては、まず除去食に完全に切り替えて2~4週間続けます。
4週間続けるとほとんどの場合には症状が完全に消失します。
その後、もともと食べていたフードに変更して、また症状が現れるようであればフードアレルギーとしてようやく確定診断ができます。
治療としては除去食試験で用いたフードを食べる事で症状が収まるのであれば、そのフードを続けていくことが治療になります。
この際に総合栄養食を使っていれば、そのまま食べ続けても栄養素としても問題なく生活していくことができます。
手作り食の場合で栄養素が足りていない場合には1種類ずつ素材を足していき、2週間継続します。
アレルギー反応が見られる場合には早くて1週間以内、遅くとも2週間以内には症状が再発するため、
2週間続けて問題なければその食材は追加しても問題ないということになります。
このように少しずつ食材を足していき、栄養バランスをとっていくことになるのです。
アレルギーは一生のお付き合い
アトピー、アレルギーの診断・治療は非常に時間と手間のかかるものになりますが、
体質的な要素が強い病気であるため、多くの場合には一生付き合っていく必要があります。
これから先の事を考えると数か月の努力で治療が行えるならワンちゃんと一緒にがんばってみてもいいかもしれませんね。
また今回は解説していませんが、ヒトの花粉症のような環境性のアレルギーも存在します。
これらの症状は食事性と異なり季節性に症状が強くなったり弱くなったりするのでそれが症状の判断基準になります。
ワンちゃんがかゆがっている姿は見ている側も辛くなります。
症状が強くなって皮膚が分厚くなったりするとさらに治りにくくなるため、
気になるようならば早めに獣医さんに相談してくださいね。
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この記事を書いた人
塩田純一郎
首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。
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