太っていなくても気をつけたい、犬の高脂血症

2024/04/16

太っていなくても気をつけたい、犬の高脂血症

コレステロールと中性脂肪

コレステロールと中性脂肪

コレステロールも中性脂肪も血液の中を流れている脂肪由来の成分の量を測定しているもので、
食事から摂取される脂質が体内で消化・分解されて血液中を輸送し易いように加工されたものがコレステロール・中性脂肪と呼ばれます。

血液は水分であり脂肪は溶け込まないため、
カイロミクロンやLDL、VLDL、HDLというような水に溶けやすい状態のものに加工されて血液中を運ばれていきます。

脂肪分の体内での流れは、食事から摂取された脂肪分が肝臓から出てくる胆汁酸や膵臓から分泌される膵液によって分解され、
脂肪酸とグリセオールになります。これらが小腸の粘膜から吸収されてカイロミクロンとなって全身を回っていきます。

また、身体のなかで栄養が足りなくなったときには、肝臓に蓄えられている脂肪分が全身に運ばれていきます。
この際に加工された状態のものをLDL、VLDL、HDLと呼びます。
特にLDLは悪玉コレステロールとして比較的よく知られているのではないでしょうか。

このように体内に吸収されたものと貯蔵されていたものが血中に再度放出される2つの経路で血中の脂肪分の濃度が変わっていきます。
そのため健康診断などで高脂血症を疑うような結果が出た場合には12時間程度の絶食を行って再検査することで、
より正確な結果を得ることができるようになります。

高脂血症になりやすい犬種と病気

高脂血症になりやすい犬種と病気

高脂血症になる原因は大きく分けて2種類あり、
生理的なもの・犬種的なもので他の病気由来ではないもの(原発性高脂血症)と、
病気を持っていることで体内のバランスが崩れて増加ししまうもの(続発性高脂血症)があります。

まず原発性高脂血症についてです。生理的な原因としては単純に食後の一時的な高脂血症です。
数値の増加値も比較的ゆるく12〜15時間程度で正常値に戻ってしまいます。
また高脂肪食を食べている場合にも血中濃度が高くなることがあります。

具体的には腎臓病に対する療法食などはカロリーを確保するために意図的に脂肪分が多くなっていることがあります。
療法食であればどの病気を重視するかで変わりますが、
療法食でないフードであれば低脂肪系の療法食に変更することで高脂血症を改善することができるかもしれません。

また遺伝的に高脂血症になりやすい犬種も存在します。最も有名なものはミニチュア・シュナウザーで、
それに続いてビーグル、シェットランド・シープドッグもかなり有名です。その他、日本では珍しい犬種ですが、
ドーベルマン、ロットワイラー、グレート・ピレニーズ、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどがあります。

続発性の高脂血症は代謝を司る内分泌系の疾患が多くしめています。
内分泌系の病気としては糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング病が挙げられます。
体内の消費エネルギーや代謝をコントロールするホルモンが異常を起こすため、
ホルモンのコントロールがうまくいかずに上昇してしまいます。

消化器の異常でも上昇し、膵炎や胆汁うっ滞、肝機能不全が代表的な病気となります。
また蛋白漏出性腎症や肥満、リンパ腫などの腫瘍性疾患でも上がるとされているため、
健康診断で高脂血症以外にどのような数値が上がっているかで
想定される背景病変が変わってくるので必要な追加検査がかわります。
その他、常用している薬でも変化することがあり、
ステロイド系の薬であるグルココルチコイドやてんかん発作の治療薬であるフェノバルビタールでも上昇します。


高脂血症の検査と治療

高脂血症の検査と治療

一般的な検査・治療の流れを解説します。血液検査の結果が高くても、治療を開始する数値のラインがあるため、
実際に治療介入の必要があるかどうかは獣医さんと相談して開始することになります。

高脂血症の多くは健康診断などで見つかることが多いため、一旦絶食下での再検査をすることが多いです。
再検査でも高い場合には、続発性高脂血症を除外するために、その他にも症状が出てきていないかを確認します。

主に多飲多尿や脱毛、肥満などの身体検査から始まり、糖尿病や甲状腺機能低下症などのホルモン疾患がないかを調べます。
この検査で背景疾患が見つかった場合にはまずその治療を行い、その病気のコントロールに従って数値が下がって行くか見ていきます。

背景疾患が見つからなかった場合には原発性高脂血症として治療を始めます。
まずは食事を低脂肪系のフードに変更して数値の変化を確認します。
この治療法については人の高脂血症とほとんど同じ治療プランになっていますね。

原発性も続発性も最初は直接高脂血症を治療していくわけではなく、
背景疾患を治療してみてうまくいかなかった場合に補助療法・薬物療法を加えていくことになります。

補助療法としてはオメガ3脂肪酸や消化酵素などのサプリメントを使用してみます。
それでも反応がいまひとつであれば内服薬に移行します。高脂血症の薬にも何種類かあるため、
血液検査を実施してどのタイプの脂肪分が血中で高くなっているのかを調べたうえで投薬を始めます。

高脂血症は放置することで動脈硬化や急性膵炎など急性の病気を引き起こしたり、
シュウ酸カルシウム結石を形成しやすくなったりする原因にもなります。
背景疾患を見つける手がかりにもなるため、数値が高いことがあれば追加の検査をおすすめします。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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