原因不明の発熱病?猫の不明熱とその治療法

2024/09/26

原因不明の発熱病?猫の不明熱とその治療法

猫の不明熱について

普段触れ合っているネコちゃんの元気がなく、触ってみると熱がありそう。
それなのに病院で診察を受けても熱の原因がわからない、という場合があります。

こういう時、獣医さんは暫定的に「不明熱」という診断をします。
不明熱とは、明確な原因が特定できないまま持続する高熱を指し、
これは猫にとっても飼い主にとっても大きなストレスとなります。

猫の不明熱は、診断が難しく、
原因によっては適切な治療が遅れると猫の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
今回は不明熱の原因や診断、治療方法について詳しく解説します。

不明熱の原因

猫の不明熱はさまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。
以下に主な原因を挙げてみます。

1.感染症
細菌による感染は、発熱を引き起こす主な原因の一つです。
例えば、猫の上部呼吸器感染症(ネコカゼ)や尿路感染症(腎盂腎炎)などが考えられます。

ウイルス感染では猫カリシウイルスや猫免疫不全ウイルス(FIV)、
猫白血病ウイルス(FeLV)など、さまざまなウイルス感染が発熱を伴うことがあります。
また飼育下ではまれですが猫伝染性腹膜炎にも注意が必要です。
カビの仲間である真菌感染症も鑑別に挙がります。
カンジダやヒストプラズマなどの真菌感染も、慢性的な発熱を引き起こすことがあり、肺炎をはじめとした全身的な炎症疾患を引き起こします。
特に免疫力が低下した子が感染しやすいので若齢や高齢の子ではより注意が必要です。

2. 自己免疫疾患
自己免疫疾患では、免疫系が誤って自分の体の組織を攻撃することで炎症を引き起こし、高熱の原因となります。
免疫異常の場合には身体のどの部位について過剰反応をしているかによって病名や症状が変わってきます。
関節への暴走であれば多発性関節炎、筋肉であれば多発性筋炎と呼ばれる病態となり、
炎症が全身にわたる全身性エリテマトーデスなどが該当します。

3. 腫瘍
腫瘍が体内で発熱を引き起こすことがあります。悪性腫瘍の場合に発熱することが多く、
肥満細胞腫やリンパ腫などが挙げられますが、その他多くの腫瘍で発熱の可能性があります。
しばしば発熱の他に体重減少や元気喪失といった症状も見られます。

4.その他の原因
外傷や中毒、慢性的なストレスなども不明熱の原因となることがあります。
特に中毒の場合は、特定の毒物が体内で反応し、高熱を引き起こすことがあります。

不明熱の原因診断

不明熱の原因診断

不明熱とは初動の検査で発熱の原因が診断できない時に使われる仮診断名です。
不明熱の診断は複雑で、多角的なアプローチが必要となります。

まず猫の年齢、性別をはじめ、病歴や症状を含めたシグナルメントを詳細に聞き取り、
体温の変化や行動の変化を観察します。
その後、改めて以下のような検査を実施します。

1.血液検査
血液検査では、白血球数や赤血球数、血小板数、肝機能や腎機能の状態などを確認します。
これにより、感染症や内臓の異常を探るのです。
またヒストプラズマをはじめとした特殊な検査によって感染が診断できるものもあります。

2.画像診断
X線や超音波検査を用いて、体内の腫瘍や異常を確認します。
これにより腫瘍や肺炎、腎盂腎炎をはじめとした内部の炎症を評価します。

3.尿検査
腎盂腎炎をはじめとした尿路感染症は尿検査を行うことで細菌の観察ができます。
細菌の感染が認められた場合には尿培養を行なって原因菌を特定。抗生剤の選択を行います。

4.追加検査
シグナルメント、血液検査、画像検査はミニマルデータベースと呼ばれ、
一般的な診断を行うための最低限の検査項目となります。
その上で診断がつかない場合には尿検査など追加の検査を必要に応じて追加していきます。
それでも診断がつかない場合には骨髄検査や組織生検など、さらに詳細な検査が行われることもあります。
このような検査になればなるほど鎮静や麻酔をはじめとした処置も必要になる場合があるため、必要に応じて追加していきます。

不明熱の治療法

不明熱の治療法

診断結果、原因に基づいて治療方針を決定します。

感染症の場合、細菌感染には抗生物質、真菌感染や原虫には抗真菌薬や抗原虫が使用されます。
ウイルス感染の場合は抗ウイルス薬や支持療法です。

多発性関節炎などの自己免疫疾患の場合には抗炎症薬や免疫抑制剤が使用されることがあります。
これにより免疫系の過剰な反応を抑え、炎症を軽減しますが、
免疫抑制剤は体内の免疫力を抑えるため、感染症が完全に否定できていなかったり、併発したりしている場合には注意が必要です。

腫瘍の治療には、腫瘍に対しての手術、放射線療法、化学療法などが考慮されます。
腫瘍の種類や進行度に応じて、適切な治療が選ばれます。
不明熱によって一般状態が悪い場合には適宜支持療法から行う必要があります。

予防とケア

不明熱の早期発見と適切な治療は、猫の健康を守るために重要です。
飼い主は、ネコちゃんの体調に変化を感じた場合には早めに獣医師に相談しましょう。
また、定期的な健康チェックや予防接種を行うことで、病気の早期発見や予防が可能になります。

猫の健康管理は、飼い主と獣医師の協力が不可欠です。猫の体調に気を配り、
疑わしい症状が見られた場合には速やかに専門的な医療を受けることが、
猫の健康を維持するための最善の方法ではないでしょうか。

病気 獣医師 ねこ

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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