春の予防で一緒にやろう!消化管内寄生虫

2024/05/08

春の予防で一緒にやろう!消化管内寄生虫

フィラリア・ノミダニ予防の季節到来!

これらの予防は蚊によって媒介されるフィラリア症と外部寄生虫と呼ばれる
ノミ・マダニといった節足動物に対するものになります。

しかし、それ以外にも体内、主に消化管内に入り込む寄生虫も多く存在します。
これらの中にはノミダニやフィラリアの予防薬で同時に予防できるものもあれば、
それぞれの寄生虫に対応した駆虫薬を飲むことでしか対処できないものもあります。

予防的に駆虫した方がいい寄生虫のなかには、ヒトにも感染する「人獣共通感染症」に分類される病気もあります。
寄生によって引き起こされる症状も消化管内だからといって下痢や食欲不振に限らず、
感染の流れの中で現れる肺炎や神経症状など多岐にわたります。

今回はなるべく予防した方がよく、感染が確認されたら気をつけたほうがいい感染症についてまとめています。
フィラリアの予防薬という面だけではない寄生虫予防について知っていただければ幸いです。


一緒に予防されることの多い寄生虫

一緒に予防されることの多い寄生虫

◆犬回虫・犬小回虫・猫回虫
犬回虫はイヌ科の動物に、猫回虫はネコ科の動物に感染し、犬小回虫はイヌ・ネコどちらにも感染する寄生虫です。

土の中にある虫卵を経口摂取することで感染し小腸で孵化。体内を移動して肺にまで行きます。
その後気管を通って消化管内に戻って成虫となり、卵を作ります。
移動していく中で肺や肝臓に障害を起こし、肺炎や肝機能障害を現します。

また虫体に対するアレルギー症状を引き起こす場合も。
症状は幼若な子ほど強く出る傾向にあり、元気消失や発育不良、削痩、貧血が観察されます。
特に注意したい点は、妊娠動物が感染している場合には胎盤を通じて子犬が感染する事。
これら回虫は人獣共通感染症であり、特に幼児で注意が必要な感染症です。

◆鉤虫
イヌとネコでは感染する鉤虫の種類は違いますが、いずれも土壌中の幼虫が経皮(皮膚から体内)に感染します。
皮膚から感染した幼虫は肺に到達して出血や肺炎の原因になります。
また消化管内にまで侵入した中体は、小腸で成虫になり消化管の壁に鉤をもつ口で吸い付き吸血します。
この感染によって貧血を引き起こす事もあるのです。

主な症状は感染によって生じる貧血や粘血便などの消化器症状から始まり、
特に若いうちは食欲不振、体重減少を伴い状態が悪化しやすくなります。
こちらもヒトへの感染力もある人獣共通感染症です。

◆鞭虫
回虫と同様に虫卵を経口摂取することで感染します。
他の寄生虫と異なり体内移行は行いませんが、消化管壁に入り込み消化器症状を引き起こします。
少数寄生では症状を認めない事もあり注意が必要です。

大量に寄生した場合には下痢や便秘、しぶりといった一般的な消化器症状を引き起こし、
ひどい場合には直腸脱を起こす事もあります。
ヒトに感染する鞭虫も存在しますが、基本的にイヌに感染する物とは種類が異なるため犬鞭虫のヒトへの感染は極めて稀です。

フィラリア薬で対処できない寄生虫たち

フィラリア薬で対処できない寄生虫たち

◆吸虫類
横川吸虫、棘口吸虫、壺型吸虫と呼ばれる寄生虫の仲間を総じて「吸虫類」と呼びます。
これらの寄生虫は頭部に吸盤を持ち、粘膜に吸い付いて寄生するのが特徴です。
少数寄生では無症状で済むことが多いですが、大量に寄生した場合には腸の運動性を低下させて下痢などを引き起こします。

感染経路は幼虫が感染した淡水魚や両生類を非加熱の状態で摂取する事であるため、
現代では日常的に感染する機会は低いと考えられますが、
外に出る習慣のあるネコはカエルなどを知らないうちに捕っていることもあるので特に注意しましょう。

◆マンソン裂頭条虫
条虫の仲間であるマンソン裂頭条虫は両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と極めて広い感染源を持ち、
吸虫類と同様に感染した動物を食べることで感染します。

こちらも少数寄生では症状を示しませんが、虫のサイズが大きいため多数寄生することで物理的な消化管運動低下を引き起こし、
異嗜症や下痢、腹痛などを引き起こします。糞便中に虫体の一部が出てくることで観察されるほか、糞便検査でも見つかります。

◆瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)
条虫類の中で最も一般的な条虫で、条虫に感染しているノミをグルーミングなどで経口摂取する事でイヌやネコに感染します。

この条虫も多くは無症状ですが、虫体は鉤を消化管粘膜に刺し込み寄生するので多数寄生した場合には出血性の下痢も引き起こします。
寄生した場合には条虫の駆虫薬を使用しますが、定期的なノミ予防も有効な対策です。

◆糞線虫(ふんせんちゅう)
鉤虫と同様の感染経路を通り、土壌虫の幼虫が経皮感染を引き起こします。
皮膚に入り込んだ幼虫は肺に至り、気管を経て小腸に入って成虫になります。

多数寄生の場合には肺への障害も強くなり肺炎の原因になります。
糞線虫は特に直腸内の幼虫も腸粘膜から再度入り込み感染するため自家感染と呼ばれます。
症状としては肺炎や消化管壁からの蛋白漏出、削痩(さくそう)、元気消失や下痢などがあります。

フィラリアの予防薬でも駆虫できますが、感染した幼虫の成長サイクルの関係で通常の投与頻度よりも多めに投薬する必要があるため、
感染の確認が重要になります。飼育状況次第では集団感染を起こすこともあるので注意が必要です。
ヒトにも感染する事があり、免疫力が低下している状態では命に関わる場合もあります。

今回は消化管内寄生虫についてまとめてみました。これらの寄生虫は糞便検査で感染の確認ができます。
フィラリア予防薬で一緒に予防できる寄生虫は全体の一部のため、日頃からの予防だけでなく、
消化器症状など気になる点があるようであれば健康診断と合わせて日常的にチェックしてみるのもいいかもしれません。

病気 獣医師 いぬ ねこ ノミ・ダニ

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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