猫の骨軟骨異形成症 その原因、症状、治療法について

2025/04/17

猫の骨軟骨異形成症 その原因、症状、治療法について

骨異形成症の原因

骨異形成症は、主に遺伝的要因によって発生します。特定の猫種、例えばマンチカンやスコティッシュフォールドなどは、この疾患を持ちやすい傾向にあります。折れ耳の形質を持つ遺伝子と関連があるとされており、マンチカンの短い四肢や、スコティッシュフォールドの耳の特徴は、実はこの骨異形成症によるものとされており、こうした猫種はリスクが高く、特に注意が必要です。折れ耳遺伝子をホモ( 2本)で持つ子はヘテロ(1本)よりもより重度に症状を表すことが知られています。

骨の成長を制御する遺伝子に異常があるため、骨形成や軟骨成長が上手く行なわれず、成長や硬化に異常が起きます。その結果、四肢の骨が短くなったり、関節の可動域が制限されたりするのです。

骨異形成症の症状と影響

骨異形成症の主な症状は、成長過程での四肢の短縮や関節の変形と疼痛です。骨異形成症を持つネコちゃんは、その他の品種と比較し脚が短くなるため、運動能力が低下します。関節部分に影響が出るため、歩行困難や関節痛を伴うことがあり、ジャンプや走る動作が難しくなります。特に、スコティッシュフォールドにおいては関節の異常により、耳が丸まるだけでなく、関節炎や痛みを引き起こしやすくなるため、生活の質が低下することもあります。

また、骨異形成症が進行すると、骨自体が変形しやすくなり、身体全体に負荷がかかります。四肢だけでなく、脊椎にも異常が出ることがあるのです。多くの場合は尾椎の変形が観察されますが、脊椎の変形によって神経が圧迫され、さらなる痛みや不快感を引き起こす可能性も。症状の進行に伴い、食欲不振や活動量の減少など、全身の健康にも影響を及ぼします。

骨異形成症の診断方法

診断方法としては、まず品種です。スコティッシュフォールドをはじめとした折れ耳形質を持つ遺伝子を持っていると骨異形成を疑います。加えて、身体検査や疼痛反応、レントゲン撮影によって診断します。レントゲン写真によって骨や関節の変形や炎症増を観察するのです。

遺伝的にリスクが高い猫種であれば、特に早期に検査を受けることが推奨されます。

骨異形成症の診断がついた場合、症状の進行具合に応じて適切な管理方法が選択されます。骨異形成症は完全に治癒することが難しい疾患です。長期の消炎鎮痛剤の投与や低線量の放射線療法などが利用されることもあり、痛みの緩和や生活の質を保つためのケアが中心となります。

骨異形成症の治療と管理

骨異形成症の治療は主に対症療法が中心です。骨異形成症を根治する治療法は現時点では存在しませんが、痛みや不快感を緩和する方法が多くあります。例えば、関節の負担を軽減するための体重管理や、必要に応じて痛みを和らげるための鎮痛剤を使用することが一般的です。特に今は分子標的薬など、長期で作用する薬も開発され、徐々に使用されてきています。

また、運動の制限や関節への負担を減らす工夫も重要です。滑りやすい床にはカーペットを敷く、段差がある場所にはステップを設置するなど、生活環境を整えることも効果的。さらに、関節の柔軟性を保つために、獣医師の指導のもと、軽度のストレッチを行う場合もあります。

薬物治療に加え、近年ではサプリメントを使用した治療も行われるようになっています。オメガ3脂肪酸やコンドロイチンやグルコサミンを含むサプリメントは、関節の健康を維持するために有効とされています。ただし、これらのサプリメントの使用は獣医師と相談した上で行うことが重要です。

特にグルコサミン・コンドロイチンは炎症が起きてしまった場合には効果が弱くなると言われているため予防的な使用が効果的とされています。

骨異形成症は、ネコの骨格に影響を及ぼす遺伝性の疾患であり、生活の質や健康に大きな影響を与えます。特に、マンチカンやスコティッシュフォールドのような猫種にはリスクが高いため、早期の診断と適切なケアが必要です。治療は主に対症療法となりますが、痛みの管理や生活環境の工夫によって、ネコが快適に生活できるようサポートすることが重要になってきます。また、繁殖管理を徹底することで、骨異形成症のリスクを抑え、健康なネコの育成に繋げることが期待されます。

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この記事を書いた人

獣医師 塩田純一郎

獣医師 塩田純一郎

獣医師。
首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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