意外に怖い?鼻血から疑うペットの疾患
2021/12/02
ペットの鼻血は病気のサインかも
体質なのかそそっかしいのか、私は子供の頃からよく鼻血をだしていました。
大人になってからも朝慌てて起きた時に、吹き出すように鼻血がでることもしばしば。
恐らく急に血圧が上がったためだと思います。
このようにヒトではよく見る鼻血 (医学的には鼻出血といいます) ですが、ペットでの鼻出血はそこまで頻繁に観られるものではありません。
もちろんぶつけた等の外傷で出血することはありますが、高齢になってからの出血や繰り返す鼻血は様々な病気のサインかもしれません。
今回はそんな鼻出血について解説していきます。
高齢になってから始まるペットの鼻出血
ペットにも高齢化の波が来ていますが、それに伴って腫瘍が増えてきており、鼻出血がそのサインになっている事があります。
それは鼻腔内 (鼻の中) の腫瘍です。
鼻の中は冷たい空気をあたためて、直接肺や気管に入らないよう、迷路のように入り組んでいます。
そこで発生した腫瘍はその迷路を少しずつ占拠し、一部を壊しながら大きくなっていきます。
ある程度大きくなってきても外観からは分かりづらいのが腫瘍の怖いところ。
レントゲンでの検査も難しく、CTやMRIが必要になってきます。
鼻の形が変わるほど大きくなってきたころにはかなりの大きさになっており、外科的な処置も困難です。
鼻出血の他にも鼻水が増えてきたり、息苦しくなって散歩などの運動をする際に動きが悪くなったり、遊びたがらなくなったりすることもサインになります。
鼻の粘膜や軟骨などの局所だけでなくリンパ腫などの全身性の腫瘍も起きる事があります。
歯が悪いペットの鼻出血
腫瘍の時と異なり、「歯」が原因の鼻出血は比較的判別がしやすくなっています。
歯根膿瘍とよばれ、歯石が感染源となって歯の根っこの部分で細菌が増殖し、炎症を起こします。
軽度のものであれば切歯の感染だけですが、重度になると最も歯根が深い犬歯に病変が及びます。
犬歯は歯根がとても深く、特に上の犬歯は鼻腔のすぐ近くにあります。
そのため犬歯の歯根膿瘍は鼻の方に瘻管(ろうかん)という穴を開けることがあり、膿様の鼻水を出したり出血したりします。
瘻管のできる方向によっては皮膚に穴が開くことも。
外科的処置では抜歯などを行いますが、その深さに加えて炎症で骨が脆くなっていることも相まって、骨折の危険もあるため注意が必要です。
内科治療は抗生物質や消炎剤を用いた対症療法となります。
若い頃からの頻繁な鼻血は血液の異常かも?
腫瘍や歯根膿瘍は高齢になってから発症することが多い疾患です。
それらと異なり「凝固異常」と呼ばれる血液が本来固まる機能がうまくいかなくなる疾患は若齢でも発生します。
有名なものでは先天性の疾患である「血友病」や免疫異常(自己免疫疾患)で起きる「血小板減少症」などが挙げられます。
これらはヒトでもある疾患なので聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
これら血液の異常は高齢でも起きる場合がありますが、若いうちに容易に出血するようだと、特に注意が必要になります。
私が獣医師になってまだ経験が浅い頃。
初めて血小板減少症と出会った時のことはとても記憶に残っています。
診断した子は4歳のフレンチブルドックでした。
今回の主題である鼻出血はありませんでしたが、歯茎(歯肉)から血が出ており、元気で食欲に問題はないと言った内容の相談でした。
実際見てみると歯肉からじわっと出血している以外の見た目は至って健康だったのです。
新米でしたがこれは只事ではないと感じて、いざ血液検査をしてみると血小板が本来の10分の1もありませんでした。
その他色々な検査を行った結果血小板減少症と診断して、ステロイドによる治療によってその後も良好な経過をたどりました。
歯肉や鼻の粘膜をはじめ、実は身体の中では微小な出血は容易に起きます。
本来はすぐさまその出血は止まりますが、このような病気ではうまく止血ができず、気づいたら全身の至る所で出血が起きていることも。
ひどくなると腋の下やお腹、鼠蹊部(そけいぶ)に打撲したような内出血が現れます。
このようにただの鼻血と言っても様々な病気のサインになっている可能性があります。
普段のちょっとした事でも気にしてみましょう!
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この記事を書いた人
塩田純一郎
首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。
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