ノミ・マダニだけじゃない!動物病院で予防できる寄生虫たち
2022/03/01
お腹の中に寄生する虫について
前回(https://www.idrugstore.jp/pet/article/62)はノミ・マダニと、それに関連する疾患について解説しました。
今回は同じ予防薬を用いることで予防できる消化管内寄生虫(お腹の中に寄生する虫)について解説します。
一度の予防薬でまとめて予防できる病気ですが、どのような種類や症状があるかを知っておくことが大切です。
消化管内寄生虫
消化管内寄生虫とは、胃腸に寄生して宿主の食事や血液等から養分を摂取する寄生虫です。
一般的な予防薬で対応できる消化管内寄生虫はう回虫・小回虫・鞭虫(べんちゅう)・鉤虫(こうちゅう)が挙げられます。
いずれも糞便中に虫卵が出てくるため糞便検査で確認が可能ですが、ノミやマダニと異なり外見から寄生しているかどうかの判断できないため、定期的な駆虫薬の投与が感染予防の基本になります。
このような消化管内寄生虫は症状をみせない不顕性(ふけんせい)感染※となりますが、嘔吐や下痢が主体となるため診察の初期段階で行う糞便検査によって、便の中から虫卵が見つかる事で確定診断になります。
そして見つかった虫卵の形でどの寄生虫が原因となっているかの判別ができるのです。
※不顕性(ふけんせい)感染…感染が成立していながら確認しうる症状を示さない状態。無症状感染。
回虫症
回虫や小回虫が原因で起きる回虫症(ワンちゃんは犬回虫、ネコちゃんは猫回虫)は、経口摂取された虫卵が腸管内で孵化し、肝臓、肺を経由。再び消化管内に戻った成虫が腸管内で産卵し、糞便中に虫卵が排泄されます。
一度に多数が感染した場合には肝臓機能障害や肺炎をきたし、命に関わることも。
また子犬の段階でも強い症状が出るため注意が必要です。成犬では下痢などの症状を示した際に行われる糞便検査によって虫卵が発見され、確定診断されるケースが多く見られます。
またこの病気の問題点は、本来の宿主であるワンちゃんだけではなく、ヒトに感染した場合にも症状を示すこと。
糞便の中に排出された虫卵をヒトが摂取するとワンちゃんと同様に幼虫が孵化します。
しかし本来の宿主ではないために、正常な成長ルートを通らず、肝臓や眼球などに留まったり迷い込んでしまったりすることも…。
ヒトに寄生すると、本来の宿主であるワンちゃん・ネコちゃん以上に肺炎や肝機能障害などの症状が発生する可能性が高くなります。
鉤虫症・鞭虫
鉤虫(こうちゅう)は回虫と同様の感染経路を辿り肺炎を起こすことがあります。
鉤虫は小腸、鞭虫は盲腸の粘膜に噛みつき吸血することで栄養を摂取します。通常は症状が現れませんが、多数寄生している場合には貧血を起こすことも。
鞭虫(べんちゅう)は体内をめぐることはなく、消化管の中で過ごします。
鞭虫や鉤虫はワンちゃんに寄生するものと、ヒトに寄生するものは種類が異なるため、ペットの寄生虫がヒトに寄生することはありません。
条虫症
回虫や鞭虫などと異なり、予防薬で対処できない寄生虫感染症に条虫症(瓜実条虫/うりざねじょうちゅう)があります。
サナダムシという名前の方が聞き覚えのある人が多いと思いますが、ワンちゃんとネコちゃんのいずれも瓜実条虫を持つノミが媒介します。
毛づくろいの際にノミを経口摂取することで小腸に入り、粘膜に噛みつきます。おしりを痒がるなどの症状を出しますが、寄生数が少ないとあきらかな症状を現さない場合もあります。瓜実条虫は基本的にノミの予防をしていれば防ぐことが可能です。
また稀なケースですが、屋外でカエルやネズミ、鳥などを捕食したために感染するうマンソン裂頭条虫(れっとうじょうちゅう)という別の種類もいます。
マンソン裂頭条虫を予防するためには、ワンちゃんの場合は小動物がいる茂みなどで目を離さないこと、ネコちゃんの場合にはなるべく外出をさせないことが重要になってきます。
これらの条虫は同じ薬で退治することができますが、症状があきらかでないことが多く、糞便中に虫体の一部がちぎれて出てくることで発見されます。見つけたときはショッキングですね。
改めて感じる予防の大切さ
今回は体内に寄生する寄生虫について解説しました。
予防薬では対処できない寄生虫もいますが、元になるノミに対処することで対応できます。
寄生する数によっても症状が変わるため気付かないこともあり、改めて日頃からの予防の重要性を実感できますね。
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この記事を書いた人
塩田純一郎
首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。
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