ペットの熱中症 気をつけるポイントと覚えておきたい応急処置

2021/08/31

ペットの熱中症 気をつけるポイントと覚えておきたい応急処置

暑すぎる日本の夏

毎日暑い日が続き、日中もさることながら夜間の蒸し暑さにも辟易します。
日本の夏の平均気温は年々上がり、今年は5年前と比べて約2℃も上昇(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/p08.html)。
各地でこの猛暑のために畑の農作物や河川の魚がやられてしまっているとか。
地球温暖化の足音が聞こえてきますね。

地球環境がこのように大きく変わっている中で、私達の生活スタイルも大きく変わりつつあります。

それが在宅ワーク。

家にいる時間が長くなり、常にエアコンを使う生活になりました。
以前は「ペットだけの留守番の時はエアコンをつけていない」という家庭も3割ほどあったようですが、それもどんどん少なくなっています。

就寝時に90%がエアコンを使っているというデータもありますが、それでもうっかり電源やタイマーを入れ忘れていたり、部屋の移動をペットができなかったりと、ペットの熱中症のリスクがゼロになるわけではありません。

犬やネコはヒトより暑さに弱い

犬やネコはヒトより暑さに弱い

犬や猫はヒトと異なり汗をかける範囲が限られ、全身に毛が生えているため暑さに弱い動物です。

大型で出身地が北の方であるシベリアンハスキーやラブラドール・レトリバー。
短頭種と呼ばれる仲間のフレンチブルドッグや、チワワ(以外と知られていませんが短頭種の仲間です)などは特に注意が必要です!

体温の高い状態が続くと脳をはじめ全身の臓器に深刻な損傷をきたす可能性もあり、熱中症が疑われる場合(異常なほど体温が高い、密室に閉じこもっていた等)には焦らず確実な対応が求められます。

ペットが熱中症にならないためのポイント

日常的に行える、熱中症を予防するための方法と簡単な注意点をいくつかご紹介します。

まずは何よりも水分摂取。ヒトと同じですね。
前述の通り犬は全身から汗をかくことができず、代わりにパンティング(ハッハッという呼吸)をすることで唾液を蒸発させて体温調節を行います。
体内の水分量が少ないと唾液の分泌量が制限され、体温が上がりやすくなってしまうのです。さらに室内で日常的にエアコンをつけていると水を飲む機会が減少。水盆の水をこまめに入れ替えたり水飲み場を増やしたりするなどの工夫をしてあげましょう。

水についての注意点が一つ。

水についての注意点が一つ。

ヒトの熱中症対策では、ミネラル補給を目的にスポーツドリンクやミネラルウォーターが推奨されますが、ペットがミネラルウォーターを飲むと体質により尿結石を形成してしまうことも。

重症になるとおしっこが出せなくなったり手術が必要になったりするので気をつけましょう。
水道水やミネラルを補充しない浄水器がおすすめです。

氷をあげるというのも手段の一つにはなります。
ただし、冷たいものは体内の温度を極端に下げてしまうので食べすぎや食べたあとの体調変化には要注意。
好みによっては氷に全く興味を示さない場合や、冷たすぎる水を嫌がって飲まなくなることもありますよ。

そのほか、冷感マットやクールベストなども日常使いに有用です。
特に水で濡らすタイプのクールベストは汗の代わりに気加熱を放出。
繰り返し使えるので災害など万が一の際にも水さえあれば使用できます。

散歩の時間についても気をつける点があります。
日中は言うまでもなく、夕方や夜間も気温が下がったからと油断すると危険です。
気温は日光を吸収した地面から上に向かって上昇するため、状況次第ですがヒトと体感温度が10℃以上違うこともあります。

熱中症!?慌てず確実にできる応急処置

気をつけていたのに熱中症になってしまった。
毎年何件かこのような状況に対面します。
そんな時にも慌てずに、動物病院に着くまでの間にできる初期対応を簡単に説明していきます。

当然といえば当然ですが、まずは身体を冷やすこと。
これが初期対応で最も重要なポイントです。
それもただ冷やすだけでなく、効率よく冷やしてあげる必要があります。
以前は全身に水をかけて体温を下げるという方法も取られていましたが、水により皮膚の血管が収縮してしまい全身からの熱の発散ができなくなるため、現在はあまり行われていません。

ではどこを冷やせばいいのでしょうか?

答えは「大きな血管が通っている部位」「ピンポイント」で冷やすこと。
具体的には「首・脇の下・鼠径(脚の付け根)」です。
ここにはそれぞれ頸静脈・腋窩静脈・大腿静脈という太い血管が比較的皮膚に近い場所を走っており、ここを冷却することで全身の血流量を落とすことなく効率的に血液を冷やすことができます。

冷却に使うものは保冷剤や凍らせたペットボトルがあるとベスト。
それがなければ冷えたペットボトルをその場で買って使うのもベターです。
可能であれば濡れタオルで表面を覆ってから使ってください。
タオルの水があると、間に何もない場合と比べてより素早く熱を吸収してくれます。

その際は定期的にタオルを巻き直して皮膚に当たって温まった部分を入れ替えてください。これはヒトの熱中症の際にも応用できます。

簡単に覚えられそうな対処法を書きましたが、必ず動物病院に向かう前に連絡を入れるようにしてください。電話と同時に応急処置を始めるといいでしょう。自宅と動物病院では行える処置の幅が違いますし、動物病院も準備をして受け入れる事ができます。

以上、今回は熱中症について書いてみました。

まだまだ暑い日が続きそうですが、夏バテにも気をつけて乗り切っていきましょう。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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