健康診断で見つかるかも?犬の「甲状腺機能低下症」

2022/05/10

健康診断で見つかるかも?犬の「甲状腺機能低下症」

知っていますか?甲状腺機能低下症

春の健康診断。皆さんはペットに受けさせていますか?
フィラリア検査と合わせて全身の血液検査を実施している病院も多くありますが、病院によっては甲状腺ホルモン(T4)を測れる場合があります。この項目は一般的に病院内で行うスクリーニングの血液検査では実施しない項目です。

ワンちゃんの場合はこの機能が低下すると甲状腺機能低下症という病気になり、対してネコちゃんはこのホルモンが出すぎる甲状腺機能亢進症という病気になります。ワンちゃんの甲状腺機能低下症の初期症状としては元気消失や無関心、食欲低下が挙げられますが、この疾患は中年から高齢で多くなるため、年齢を重ねてくることで出てくる変化として見過ごされがちです。

そのため、健康診断シーズンのこの時期にあわせて甲状腺ホルモンを検査することで早めの発見につながるのです。活動性の低下が年齢によるものではなく、病気が原因で、本当はもっとアクティブだった!ということがわかることも。

今回はこの甲状腺機能低下症について解説していきます。

元気の源!甲状腺の場所と機能

甲状腺はあごのすぐ下、左右2つに分かれて存在します。他の多くの内分泌腺臓器と同様、脳の近くにある下垂体から刺激されてホルモンの分泌を調整しています。ここで合成された甲状腺ホルモンの「サイロキシン」が血液中に流れていき、全身での代謝を調整しています。

サイロキシンの主な作用は体内での熱産生、自律神経の制御、タンパク質合成・糖吸収・脂質利用の促進です。つまり栄養の吸収を上げてエネルギーに変換し、活動力を上げるためのホルモンです。

イヌの甲状腺機能低下症

ワンちゃんの場合には甲状腺ホルモンの分泌量が低下してしまう甲状腺機能低下症という病気が発生します。甲状腺が炎症によって機能しなくなることや、正常な組織が腫瘍の細胞と置き換わってしまうことなどが主な原因です。

甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると、元気消失や無関心、食欲低下を始め、皮膚が粗くなったり左右対称性の脱毛が見られたりします。全身の代謝能力が下がるため食が細くなっていく一方で体重が増える、といったことも。症状もゆるやかに進行するため、飼い主に気づかれないことも非常に多くあります。血液検査ではコレステロールやトリグリセリドの値の上昇で疑うことができますが、こちらもまた特徴的な変化とも言いづらいため診断が難しくなります。診断するためには血液中の甲状腺ホルモンを直接測定する必要があるのです。

甲状腺機能低下症の治療法

甲状腺機能低下症の治療法

甲状腺ホルモン機能低下症の治療は、不足しているホルモンの補充を行います。
甲状腺が弱ることで絶対量が減少するため、ホルモン製剤の飲み薬を定期的に摂ることになります。内服を開始して1週間程度で血中濃度が安定してくるので、再度測定して内服の量を更に調整します。
皮膚にまで症状が出ている場合には改善までもう少し期間が必要となりますが、早い子で1ヶ月あたりから症状の改善が見られてきます。

今回はワンちゃんの甲状腺機能低下症について綴ってみました。治療よりも発見が難しい印象の病気ですので、シニアに入ってきた子たちは定期的な健康診断の際に一緒に検査をしてみてはどうでしょうか。

またシニアのネコちゃんでは甲状腺ホルモンの分泌量が増える甲状腺機能亢進症になることがあります。
この疾患については以前記事になっていますので、(https://www.idrugstore.jp/pet/article/9)あわせて読んでみてくださいね。

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この記事を書いた人

塩田純一郎

塩田純一郎

首都圏で5年間犬猫を中心とした診療に携わりました。
その後は病気のメカニズムや細胞たちの反応、薬の作用について勉強しています。
日常の身近な疑問や病気のメカニズムについて、わかりやすくお話しできればいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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