犬と触れ合う前に知っておきたい!人と犬の共通感染症

2022/03/24

犬と触れ合う前に知っておきたい!人と犬の共通感染症

人獣共通感染症とは

前回の記事では人と猫の共通感染症の話をしましたが、こういった動物から人に感染する可能性があるものを「人獣共通感染症」と言います。
今回は人と犬の共通感染症について解説していきます。

※前回の記事:猫飼いなら知っておきたい!人と猫の共通感染症
https://www.idrugstore.jp/pet/article/68


【引っかき傷や咬み傷によって感染】

狂犬病:狂犬病に感染した犬に咬まれることで感染します。
発症すると神経症状や昏睡状態になり死亡する恐ろしい感染症です。
現在日本は狂犬病の清浄国(せいじょうこく)で、飼い犬にも狂犬病ワクチン接種義務があるため、国内で狂犬病に感染することはほぼありません。

ですが、狂犬病清浄国ではない国で狂犬病ワクチン未接種の犬に咬まれた場合、感染のリスクが高くなるため、咬まれた直後に連続でワクチンを接種することで発症を防ぐ必要があります。
※清浄国…悪性伝染病の発生が確認されていない国のこと

パスツレラ症:元々犬の口や爪の中にいる常在菌で健康な犬からでも感染し、傷口が腫れて痛みを伴うことがあります。

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症:傷口から感染し、発熱、腹痛や吐き気などの症状を起こします。敗血症(はいけっしょう)や髄膜炎(ずいまくえん)などの重症例も報告されています。

【尿や便などの排泄物から感染】

サルモネラ感染症、カンピロバクター感染症:便の中の病原菌が食事などに混入することで感染し、吐き気や下痢などの胃腸炎を引き起こします。

Q熱:尿や便から感染し、風邪のような症状が出ますが多くの場合軽度でおさまります。

ブルセラ症:犬のオスの精巣や前立腺に炎症を起こし、メスに感染すると不妊や流産の原因になることもあります。犬の尿から人に感染し、風邪のような症状が出ることが多くみられます。

レプトスピラ感染症:感染すると犬の肝臓や腎臓に障害を起こし、治療が遅れた場合には致死率が高い恐ろしい感染症です。
犬の尿から人に感染し、症状は軽症なものから肝不全、腎不全などの重症なものまで様々です。
犬は保菌しているネズミや家畜動物の尿が流れる可能性のある田んぼや川には入らせないようにすることが予防方法の1つです。またレプトスピラ感染症にはワクチンも接種も有効です。山、川、田んぼや牧場が近くにある場合はワクチン接種をお勧めします。

エキノコックス症:北海道のキタキツネや犬に感染する多包条虫(たほうじょうちゅう)という寄生虫が原因で、キタキツネや犬の糞便に排出された寄生虫卵が人の体内に入ると肝不全などの重い症状を起こします。
感染症例の多くは北海道ですが、本州の犬の糞便からも虫卵が確認されています。北海道では特に野山に出かけた場合は手洗い、靴についた泥や土は水でよく洗い流す、川などの水を飲まない、犬を外に放さないなどの感染対策をしましょう。

回虫幼虫移行症:回虫という寄生虫が便を介して感染します。
便内の寄生虫卵が体内に入り幼虫に発育し、その幼虫が様々な臓器まで移動します。幼児に感染すると肝臓、脳、眼などに障害を引き起こす可能性があります。

【濃厚接触により感染】

【濃厚接触により感染】

皮膚糸状菌症:カビの一種が原因の皮膚感染症で、犬には脱毛やフケなどの症状が出ます。また感染犬と接触することで人も感染し、フケやかゆみ、水疱ができるなどの皮膚症状を引き起こします。

疥癬〈かいせん〉:ヒゼンダニという外部寄生虫が原因で、人にも犬にも強いかゆみや脱毛のような皮膚症状を引き起こす場合があります。

【ダニに吸血されることで感染】

重症熱性血小板減少症候群〈SFTS〉
SFTSウイルスを保有するマダニに吸血されることで感染します。
発症した場合、犬から人、人から犬、犬同士での感染も確認されており、発熱や消化器症状、血小板減少、白血球減少などの重篤な症状を引き起こします。

ワクチンもなく、致死率も高いため、マダニに吸血されないことが有効な予防法と考えられています。

そのため、犬にはダニ予防の薬を投与し、散歩中は草が多い場所を避ける、散歩後には犬がマダニに咬まれていないか全身の被毛をチェックする、咬まれていた場合は動物病院を受診するなどの対策をしましょう。

犬は日常的に外にお散歩に出ることが多いので、その分感染症にかかるリスクも高まります。
飼い犬を感染させないということと、飼い犬から感染させられないためにも、感染対策について考えてみてはいかがでしょうか?

犬の病気 病気 いぬ 獣医師 タメになる

おすすめのペットグッズ

この記事を書いた人

獣医師 赤松愛

獣医師 赤松愛

獣医師
酪農学園大学卒業。今年で小動物臨床経験7年目。
現在は千葉県で犬猫、小動物の一般診療に従事しています。
猫とフェレットとクォッカが大好きです。

この人の書いた記事を見る

\SNSでシェアする/

アイドラペットTOPへ戻る